リンダキューブ アゲイン PlayStation the Best
先だって紹介した『ティアーズ・トゥ・ティアラ 花冠の大地』は、魔王が物語の主人公というシミュレーション RPG だった。
今回紹介する『リンダキューブ アゲイン』は、一層風変わりな RPG だ。
もともと『リンダキューブ』として1995年に PC エンジン用ソフトとして発売された作品である。
当時、PC エンジンユーザーとして、雑誌「 PC エンジンファン 」で発売予定リストにその名前だけを見たことはある。
キャラクターのイラストだけ見て「SF 風のサイキックなアドベンチャーゲームみたいなもんか」と勝手に思い込んでいた。
私が実際にゲームに触れたのは、プレイステーションへの移植版『リンダキューブ アゲイン』になってから。
しかもゲームアーカイブスに収録されてからだから、2年ほど前ということになる。
プレイしてみると、かつて抱いていた印象は裏切られた。
もちろん、いい意味で。
作品の舞台は、ネオ・ケニアと呼ばれる惑星である。
8年後、ネオ・ケニアには巨大隕石が落ちてきて、生物が死滅してしまうことが分かっている。
官民一体の脱出プロジェクトが進む中、神様(?)が箱舟型の宇宙船を地上に下した。
この宇宙船にできる限り多くの種類の動物を、オス・メス一つがいずつ収めて脱出せよ、というのだ。
レンジャー部隊の隊員として働く主人公の少年ケンは、幼馴染の少女リンダとともに人間代表として立候補し、動物集めに乗り出すことになる。
この設定から分かるように、主人公は世界を救えない。
世界は必ず滅亡する。
そして魔王のような、主人公が倒すべき明確なボスもいない。
本作にはA・B・C・Dの4つのシナリオが収められていて、ゲーム開始時にどのシナリオを進めるかプレイヤーが選ぶ形になっている。
(最初に選べるのはD以外。)
それぞれのシナリオは登場人物や世界観は共通だが、展開が異なっている。
例えば、あるシナリオではラスボスとして敵対する人物が、別のシナリオでは序盤で死んでしまうというような具合である。
また、シナリオクリアに必要な動物の数や、プレイ可能な年数も異なっている。
そう、舞台設定にある通り、ゲーム自体に時間制限がある。
フィールドを移動したり、動物と戦闘をしたり、野宿したり、宿に泊まったりするとゲーム中の時間が経過してゆく。
主人公が戦闘を通じて経験値を貯めて一定のレベルに上がったり、特定の時間が経過したりすると、イベントが発生して物語が進む。
時間が進むにつれて、惑星の住民は他の惑星に移住していくので、街はどんどんゴーストタウン化する。
ゲームの第一目標は、敵を倒すことではなく、動物を集めることである。
動物と戦って、 HP がゼロにほど近くなる程度にダメージを与えると動物を捕えることができる。
動物の HP を遥かにオーバーしてしまうと、動物は肉片として飛び散ってしまい、捕獲できない。
そして動物を捕獲すると経験値を獲得できるが、お金は獲得できない。
(RPG 世界では異端だがリアル世界のことを考えれば当然ではある。)
しかし動物は箱舟に収める以外に、主人公たちの装備品やアイテムの材料にもなる。
捕獲した動物を加工し、より強力な武器を作ってより強い動物に挑む。
あるいは、主人公たちのレベルが上がって攻撃力が強くなりすぎてしまったら、わざと弱い武器を装備して捕獲に挑む。
余剰となった装備品やアイテムを売ってお金に換える、という具合でプレイを進めることになる。
「単純に敵を倒せばよし」という従来の RPG への反抗心が伺える。
動物を集めるという点では後の「ポケットモンスター」シリーズに通じるものがあるし、動物と戦って装備品を作るという点では、「モンスターハンター」シリーズに通じるものがある。
発売当時としては、かなり斬新なシステムだったのではないか。
だが、ひねくれているのはゲームシステムだけではない。
動物は「ネコ」とか「イヌ」とか一般的によく知られた名前のものが登場するのだが、大抵のものはデザインが似ても似つかないほどグロテスク。
敵役となる連中にしたって、狂的・変態的な性格ばかり。
挿入されるアニメムービーには猟奇的な表現が目立つ。
主人公とヒロインが恋人同士という状態の場合、野宿すると「若い男女がテントで2人きりなら必ずやるであろうこと」をほのめかす表現が現れることもある。
総じて「大人向け」な味付けがなされていて、これが本作の魅力の一つになっている。
もともとが PC エンジンのソフトなだけに、グラフィック面では3D 表現はなく、あっさりしたドット絵で表現されているものの、簡素な分だけサクサクと操作できる。
動物との戦闘はシンボルエンカウントなので、目的の動物と戦うのが比較的容易というのも快適なプレイに繋がっている。
(準リアルタイム制だからランダムエンカウントだと時間制限システムに馴染まないという理由でシンボルエンカウントなのだろう。)
古さを勘案しても、十分面白い作品。
「世界を支配しようとする悪を、剣と魔法で倒すのには飽きた」という人にはうってつけだ。
ゲームアーカイブスのPS3・PSP用なら600円で遊べる。
非常にお買い得である。
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