ゼノギアス PS one Books

今年2010年6月に発売された Wii 用の RPG 『ゼノブレイド』。
その作品の企画・脚本・総監督を務めた高橋哲哉がスクウェア(現:スクウェアエニックス)勤務時代に手掛けたのが『ゼノギアス』である。
1998年発売のプレイステーション用 RPG。
90万本を売り上げたヒット作で、今なおリメイクを望むファンの声が絶えない一方、信者がうるさい作品として揶揄されることもある。
その評判の真偽を確認させてもらった。
ストーリー
ゲームを始めると、「我はアルファであり、オメガである。最初であり、最後である。」という有名な聖書の一節が表示されるとともに、セルアニメーションによるオープニングムービーが流れる。
宇宙を航行中の巨大艦船で緊急事態が発生。
艦体の制御システムが急速に乗っ取られようとしていて、乗組員たちは艦橋で必死の対処を行っている。
しかし試みた手段はどれも効果がない。
艦長は総員退艦を指示。
マクロスのように民間人が多数艦内に居るらしく、群衆は避難船へ殺到する。
しかし艦体の武装管制を乗っ取られたために避難船は撃墜され、艦体内部から巨大なケーブルが生物のように外装を突き破り始める。
一人艦橋に残った艦長は自沈を敢行。
艦は傍にあった惑星に墜落していく。
そして海岸で、バラバラになった艦体の一部を背に、一人の女が立ちあがる。
何故か全裸で傷一つないその女は、別の艦体片によるものであろう流星を静かに眺めていた……。
といったところで、本編開始。
このゲームの世界は、「キスレブ」と「アヴェ」という二つの国家が大陸を二分している。
二国は長い間戦争を続けていて、もはや何が戦争の原因だったのか分からないくらい。
その戦争を変えたのが、遺跡から発掘された人型兵器「ギア」だった。
このギアというのは、モビルスーツとかヴァルキリーとかパトレイバーみたいな、人間が乗り込んで戦うもの。
過去の文明の優れた科学で作られた品々を、両国は競って遺跡から発掘。
それらを解析・運用していった。
なお、この遺物の管理・分配は「教会」(作中でもカギカッコつき)が行っている。
領内に遺跡が多く存在するキスレブ側がアヴェを圧倒し始めるが、アヴェ側に「ゲブラー」と名乗る謎の組織が協力。
ゲブラーの進んだ科学力と軍事力により、戦局は五分五分に戻った。
そんな背景が文章であっさりと説明され、脳味噌が辛くなったところで物語は主人公に移る。
戦争とは無縁なアヴェ辺境の村。
剣と魔法の世界の RPG の村といった感じで、電気も自動車もなさそうなところである。
そこに住む、主人公の青年、フェイ。
彼には3年以上前の記憶がない。
3年前、謎の男が村を訪れ、重傷を負い記憶を失った状態の彼を村長に託していったのだった。
村人とすっかり馴染んでいる彼は、友人の結婚式を明日に控えて、村の近所の山に住む変わり者の医師、シタンのところへカメラを借りに行く。
その帰り道、村がキスレブのギア部隊の襲撃を受けるのを目撃する。
シタンとともに村へ急行すると、村は火の海であった。
フェイは放棄されたキスレブのギアのコックピットに少年が搭乗しているのを見る。
少年は幻だったのか、そのままフェイはギアに乗り込み、キスレブ軍と戦おうとする。
シタンは何か事情を知っているのか、フェイを制止しようとするが聞き入れてもらえない。
そんなところへ、避難していた友人が弟を探してのこのこと村へ戻ってくるが、フェイはキスレブ軍に阻まれ助けることができない。
友人が殺されたそのとき、フェイの心の中で過去のフラッシュバックとともに何かが発動、村と村人を巻き込みながらキスレブ軍を一瞬のうちに壊滅させてしまう。
生き残った村人たちに人殺し呼ばわりされて居場所を失ったフェイは、村を出て当てのない旅をすることになった。
そして彼は、世界とこの惑星の歴史の真実、自分の過去を知ることになる……。
序盤の展開だけ見てもなかなかややこしいが、この作品の肝であり見どころは複雑な世界設定である。
よく分からない用語が序盤から逐次登場し、プレイヤーを困惑させる。
聖書を主な元ネタとしつつ、どこかの SF 作品(小説・映画)で見たことのあるような種々のモチーフに心理学や精神分析あたりのネタも織り交ぜて、壮大な SF ストーリーが構成されている。
と言うと、時代的に同時期のヒット作品『新世紀エヴァンゲリオン』が思い起こされるわけだが、エヴァンゲリオンのように伏線を投げっぱなしで終わることはない。
このあたりが『ゼノギアス』の根強いファンの支持を獲得した一因だと思われる。
と言っても、小説やマンガと違って読み返して伏線を確認することが困難な RPG では「ストーリーが難解」と評価されても仕方がないところ。
ませた中学生もしくは高校生以上のプレイヤー向きだろう。
『ゼノギアス』のストーリーを簡単に言ってしまえば、一つの神話体系であり、神によって仕組まれた運命の呪縛を断ち切り、人間が自立を果たす物語である。
ゲームシステム
話をゲームシステムに移そう。
基本的にキャラクターは2D、背景はポリゴンで描写されている。
初代プレイステーションなだけに、今から見ると映像は荒い。
SF は高画質な描写が映えるジャンルだから、リメイクの声が強いのもうなずけるところだ。
(ただ、ドット絵ゆえに問題にならないグロテスクな描写や性描写がわずかに存在するため、そのまま高画質化は無理だろうとも思われる。)
キャラクターの操作ではジャンプができるのだが、これが曲者。
ダンジョンでの移動では、ジャンプして足場を上っていたり、足場から足場へ飛び乗ったりしなくてはならない局面がある。
だが距離感が掴みづらいため、操作は難しめ。
アナログスティックに対応していないのも少々辛い。
このマイナス点が噴出するのが「バベルタワー」というダンジョンで、プレイヤーの語り草になっている。
私もバベルタワーで何回も操作ミスをしてしまい、「一体このゲームはいつの間に『 ICO 』になったんだ!」と心中で叫び、ゲームデザイナーに殺意が湧いた。
プレイヤーに試練を与えるのは結構なのだが、バベルタワーの過剰なアクション性はバランスを欠いている。
本作の戦闘は基本的にランダムエンカウントシステムなのだが、「ジャンプしようとしたら戦闘が始まってしまう」ということもよくあり、プレイヤーをイラつかせる一因にもなっている。
RPG に属する作品ではあるが、少なくとも、スーパーマリオの1面をクリアできない程アクションゲームが苦手な人や、手指の動きに機能障害のある人はクリアできないと思っておいた方がいい。
戦闘
戦闘システムは、ターン制。
そしてストーリーに応じて、生身で戦う局面と、ギアに搭乗して戦う局面がある。
生身の場合、1ターンにつき、各キャラクターに AP という点が割り当てられていて、「□ボタン:小攻撃:AP1消費」「△ボタン:中攻撃:AP2消費」「○ボタン:大攻撃:AP3消費」となっている。
そしてAPの範囲内で攻撃を連続して繰り出すことが可能である。
戦闘中の各ボタン攻撃の使用回数(厳密に言うと攻撃のモーションを見た回数)は逐次プログラムに記憶されおり、レベルに応じて特定のボタンを押す順番による必殺技を習得する。
対戦格闘ゲームの影響が強いシステムといえるが、格闘ゲームとは違って操作に時間制限はなく、自分のペースで操作できる。
ギアの場合は AP はなく、いわゆる MP (マジックポイント)のように機体の燃料を消費して攻撃する形になり、必殺技の発動できる条件も変わるのだが、詳述は割愛する。
総じて言うと、生身時の通常攻撃アクションがちょっと長めなのが気になるが、なかなかテンポのよい戦闘が楽しめる良好なシステムである。
戦闘のゲームバランスは、雑魚戦は基本的にボタン連打で勝てるので易しい方だが、中には考えなしにボタンを連打していると全滅してしまったり、ダメージを与えられない敵がいるので、それなりに戦術の工夫は必要になってくる。
ギア戦では、生身のときほど気軽にダメージを回復することができないため、ダンジョン攻略とボス戦をギアで行う局面では苦しむことになる。
燃料もしかりで、ドラクエのリレミトのように途中でダンジョンから脱出することができないため、燃料切れでダンジョン途中で立ち往生してしまい、泣く泣くリセットしなくてはならないという最悪の状況もあり得る。
とはいえ、ことギア戦について言うと、装備と戦術を工夫すればラスボスすら楽勝で倒せてしまう面もあるので、良くも悪くもプレイヤー次第と言えよう。
前述のとおり、敵との遭遇はランダムエンカウントシステム。
エンカウント率が高めなのでイライラ度も高く、アクション要素のために無駄なキャラクター移動が多くなりがちなため、悪い相乗効果が働いてしまう。
シンボルエンカウントで話が進行するステージがあることを考えると、シンボルエンカウントに統一してほしかった。
Disc2
『ゼノギアス』で物議を醸しだしたのが Disc2 である。
本作は CD-ROM 2枚組の作品なのだが、Disc2 までストーリーが進むと、突然展開が早くなる。
さながら、予定話数よりも早く放送打ち切りが決定してしまい、物語の圧縮を迫られた連続ドラマのよう。
本来であればイベントやダンジョン攻略があるべきであろうところが、主人公やヒロインの独白によって説明されてしまうのだ。
イメージとしては、「△△が起こったので、俺たちは○○へ向かった。敵の軍勢を退けた先にいたのは、XXだった。」みたいな感じ。
そしてボス戦だけはプレイヤーが操作できる、と。
折角盛り上がるストーリー展開なのに、勿体ないなあ……という気分で次のパートへ移っていかざるを得ない。
しかしラスボス直前の世界、ラスボスのいるダンジョン、隠しダンジョンはしっかり作られているし、スケジュール的にはよりタイトであろうアニメーションムービーは、結末のシーンでも作られているので、尻切れトンボではない。
予算か納期の関係で事前の計画通りには完成できないことが早期に判明したので、途中を省略したのだろうか?
一説には、同時制作していたファイナルファンタジーシリーズの方に予算と人員を奪われたためとも言われているし、監督が脚本をなかなか完成させなかったためにプロジェクトが混乱してしまったとも言われている。
また、予定では古代文明の時代のシナリオが存在したがほぼ丸々カットされたという話もある。
しかし確固たる情報ソースがなく、ネット上の怪しい噂の域を出ない。
何はともあれ、このDisc2の構成は、ストーリーを破綻させるものではないが、作品としては未完成の印象を受けてしまう。
これもまた、完成版としてリメイクを求める声に繋がっているのだろう。
ただ、独白説明部分をクエストで置き換えたらプレイ時間が10時間から20時間くらい伸びてしまいそうな気もするので、結果的にはスムーズにエンディングへプレイヤーを誘導できたと言えなくもない。
ちなみに、Discの容量を見たところ合わせて750MBほどだったので、ハードウェア的な容量不足から内容がカットされたわけではないと思われる。
サウンド
シェパト防衛戦で流れる音楽は盛り上がりに大きく貢献していた。
キャラクターの声は基本的にアニメーションムービーと戦闘中の掛け声にしか存在しない。
折角実績のある声優陣を起用しているのに勿体ないが、それは大した問題ではない。
問題なのはアニメーションムービーの音声レベルが小さすぎて、アンプや TV 側のボリュームを上げないとセリフが聞き取れないこと。
テストプレイしたらすぐに気づくはずなのに……。
総評
万人向きではないし、不満点はそこそこにあるものの、全体としてはうまくまとまった良作。
英語版 Wikipedia の記事を読む限りでは、日本に続いて発売された北米でもかなり評価が高い。
今はゲームアーカイブスで600円で販売されているので、PS3かPSPで遊ぶことができる。
その値段を考えればお買い得。
クリアに必要なプレイ時間は60時間から100時間程度だと思われる。
アクション要素が難しめだし、ダンジョンでカメラ視点をグルグル回せることが迷いやすさに繋がっているので、人によってプレイ時間が大幅に変わるだろう。
とにもかくにも、本作の SF ストーリーを受け入れられるかどうかが、プレイヤーが抱く感想に直結していると思う。
ただし、SFマニアの原理主義的な人にとっては「あれはXXのパクリ、これは○○のパクリ」という反感を抱きやすいと思われるので、近づかない方が精神衛生上よい。
Web 上の評価の例
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