ティアーズ・トゥ・ティアラ -花冠の大地- アクアプライス2800
知人同士で立ち上げた零細アダルトゲーム会社が、ここまで来たかと思った。
アクアプラスの PS3 参入第一弾ソフト、『ティアーズ・トゥ・ティアラ 花冠の大地』のことである。
PS2 では『ToHeart2』とか『うたわれるもの』とかをリリースしていたけど、開発が困難だとか多額の開発費がかかると噂される PS3 に参入してくるとは、チャレンジ精神の豊かな会社だと思う。
『ティアーズ・トゥ・ティアラ』自体は元々 PC 用のシミュレーション RPG で、性描写があるためいわゆる18禁ソフトだった。
『花冠の大地』はコンシューマソフトなので当然のことながら全年齢対象。
PC 版をプレイしていないので確認していないが、主要キャラクターやおおまかなストーリー、基本的な戦闘システム以外は作り直しているらしい。
つまり、フルリメイクである。
発売は2008年。
PS3 用ソフトとなると、マシンパワーを生かした綺麗な画像が期待されるわけだが、その点では及第点。
オープニングムービーはセルアニメーション。
ストーリーはアドベンチャーゲームによくあるように、立ち絵の紙芝居が主で、特定のシーンに一枚絵が画面全体に表示されるスタイル。
時々3Dでモデリングされたキャラクターが動いて演技をすることもある。
戦闘はクォータービューの3D(カメラ位置は操作可能)。
こんな感じで、うまく簡素化して開発費を節約しているように思われる。
紙芝居や一枚絵自体は720pなので、PS2に比べれば当然ながら十分綺麗。
3Dはトゥーンレンダリングではないが、アニメ絵に近くモデリングされている。
背景テクスチャもなかなか細かく描かれているように見える。
多分外注で行っているのだろうが、低予算なりにはよくやったんじゃないかと思う。
さすがに『MGS4』とか『戦場のヴァルキュリア』とか並みの凝ったグラフィック処理を求めるのは酷だ。
ストーリーは、いわゆる西洋の剣と魔法の世界的な世界観のもとに進む。
狩猟を中心に生活を営むゲール族。
その族長の娘リアンノンは、巫女として未来予知の力があった。
危険を察知した彼女は、村人たちを狩猟に出して一人村に残る。
そこへ、魔王を復活させて国を乗っ取ろうと企む「神聖帝国」の神官が軍を引き連れてやってくる。
リアンノンは一族を守るのと引き換えに、魔王復活の生贄としてわが身を神官に預けることにする。
リアンノンがさらわれたことを知った兄にしてゲール族一の戦士アルサルは、不退転の決意で村に火を放ち、一族を率いてリアンノン奪還に向かう。
一方、神官が魔王復活の儀式を行っていると、神官の努力とは関係なしにたまたま魔王アロウンが千年の眠りから目覚めた。
アロウンとリアンノンが邂逅するが、リアンノンは神官に操られていて正気を失っている。
アルサルもその場へ踏み込んでくるものの、神官を攻撃するとリアンノンにダメージが及ぶため手が出せない。
そこでアロウンはリアンノンの意識へダイブし、リアンノンを正気に戻す。
アロウンを交えて神官と帝国の兵士たちを撃退したところで、リアンノンは兄に宣言する。
「私、魔王さまの嫁になります!」
アルサルは突然のことに反対するものの、溺愛する妹の固い意志には逆らえず、渋々承諾。
一方、自分の意思を無視されているアロウンだが、完全な形で復活したわけではないため肉体は人間並みでしかない。
やむなく族長の娘の夫=族長としてゲール族を率いて帝国から逃げることにした。
(どうやらゲール族は母系制らしい。)
村を捨てたゲール族が向かう先は、かつて妖精族の王国が栄えたという辺境の島、アルビオン島。
アロウンはそこに眠る古城、アヴァロンの封印を解き入城する。
アヴァロンを根拠地として、アロウンたちと神聖帝国との戦いがここに始まる……。
という具合で、パッケージの真ん中に描かれている、剣を握った正義感の強そうな兄ちゃんは主人公ではなく、その横に居る銀髪黒衣の目つきの悪い男が実は主人公なのであった。
この魔王、本人の意思とは関係なく、やたらと女性にモテる。
女性からの押しには弱いため、女性キャラクターが登場するたびに、なし崩し的に嫁ということになってしまう。
さすが元エロゲーというところ。
豊富な女性キャラクターに翻弄される魔王とそのコミカルなやり取りがシナリオの一つの売りである。
かといってハーレム的なラブコメというわけでもなく、圧倒的強国に挑む戦争物語という点でもなかなか熱い。
敵でなければ通じ合えたかもしれない名将とか、歪んだ愛情のために憎悪に取り付かれた敵将とか、敵キャラクターにもいい味を出している奴が居る。
味方側男性キャラクターについて言えば、アロウンは口は悪いものの男気と優しさを秘めた男版ツンデレといった感じだし、アルサルは愚直な熱血男、途中で登場する優男は飄々としているようで男の矜持をむき出しにすることもあるといった具合だから、意外と女性がプレイしても楽しめるんじゃないかと思う。
この辺は、シナリオが肝であるノベルゲームで食ってきた会社の面目躍如といったところだろうか。
ちなみに、『サクラ大戦』のようなヒロイン攻略の要素はないし、ストーリー分岐もない。
肝心の戦闘システムだが、これがなかなかうまく出来ている。
基本的には味方フェーズと敵フェーズに分かれてグリッドの中の駒を進めていく、オーソドックスなスタイル。
難易度は、ゲーム開始時にEASY、NORMAL、HARDから選べる。
経験値やスキルポイントは戦闘終了時ではなく、各キャラクターが攻撃や魔法の詠唱、アイテムの使用といった行動を行ったときに入る。
そして、戦闘に勝利できず全滅してしまったとしても、戦闘中に獲得した経験値等は持ち越して再開できる。
つまり、敵が強くてクリアできないというステージにぶち当たってしまっても、何回も戦って全滅を繰り返していけば、そのうち味方が強くなって倒せるようになる、というわけ。
だから、戦闘が下手な人でもじっくり時間をかければそのうちクリアできる。
NORMAL でプレイしたところ、「戦士系キャラは前衛、魔法使い等の遠隔攻撃キャラは後衛」という原則を守っていれば中盤くらいまではゴリ押しでもOKだが、後半は敵が広範囲攻撃を使ったり、一人のキャラを集中攻撃してきたりして辛くなってくる。
したがって、敵と味方の属性(火・地・水・風、聖・闇・星)の相性とか、スキルの選択とか、敵攻撃を想定した配置・進軍を考慮して戦う必要がある。
油断していると全滅することがあったので、程よい難易度だったと思う。
なお、アルビオン島に上陸した時点でフリー戦闘が可能になり、いわゆる「経験値稼ぎ」が出来るようになる。
アヴァロンに入城した時点で、武器や防具などを購入したり、傭兵キャラを育てて自軍戦力に加えたり出来るようにもなるので、最小戦闘でストーリーを進めるのもいいし、じっくり戦力を整えてイベント戦闘に挑むのもいい。
(とはいえ、傭兵キャラは積極的に育成しておかないと後々泣く羽目になるだろう。)
戦闘の速度が3段階で調節できるのも地味だがありがたい作りだ。
当初の速度がかなりゆっくりしていてまどろっこしいので、速度を上げるとテンポよくサクサク操作できる。
移動場所を選んでから「遠隔攻撃が届かない」と分かってしまった場合、移動をキャンセルして移動場所を選びなおせるというのも素晴らしい。
『サクラ大戦』だとこれができなくてイラっとさせられる局面がしばしばあったので、本作の仕様には非常に助けられた。
クリアまでのプレイ時間は、私の場合レアアイテム(最強の武器防具)を手に入れるために戦闘をやりまくったので81時間くらいかかった。
単純にクリアするだけなら、多分50時間くらいで出来ると思われる。
PS3 の処理能力をフルに使い切った作品というわけではないが、丁寧に作られた佳作といえる。
すでに廉価版が発売されていて、手ごろな値段で入手できる。
「 PS3 を買ったけど、日本風のとっつきやすそうなソフトが少ない 」と困っている人にお勧めの作品だ。
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