サスペンスとミステリーとファンタジーがごちゃまぜの論戦を扱ったサウンドノベル『うみねこのなく頃に』シリーズも早4作目。
売り文句が正しければ、今作で出題編が終了ということになる。
『 EP4 Alliance of the golden witch 』には『ひぐらしのなく頃に』同様EP1からEP3までが同梱されていて、「出題編が終わったら買おう」という人が多かったのか、各地で売り切れになっていたらしい。
大阪日本橋の店舗では、委託発売開始日(12月30日頃)に行ったら行列もなく在庫もいっぱいあったのだが……。
ちなみに今回はパッケージが 07th expansion の作品では初めてトールケース( DVD のケースで一般的なもの )になっていて、パッケージのイラストも竜騎士07ではなく江草天仁が手がけているなど大きく刷新されている。
お値段も2625円と少々高くなっているが、4話収録で読破に30時間から40時間くらいかかるし、文庫4冊分程度のボリュームであることを考えれば悪くない。
EP4 では、従来描かれてきた1986年の孤島での富豪一族連続殺人に加えて、現場に居合わせず難を逃れた主人公の妹の1986年以降(主に1998年)の視点から数多く描写がなされている。
以下、ネタバレ注意。
EP4 で明らかになった事実をいくつか挙げてみると、
・EP4 の1998年の設定では、絵羽は一人隠し屋敷にいるところを発見されて生還。結果、マスコミに一族皆殺しの疑いをかけられるが警察は訴追できなかった。その後、6歳の縁寿を半ば嫌がらせ的に育てながら会社を切り盛りしつつ、心身を病んで死亡している。
・縁寿は絵羽が両親と兄を殺害したと信じ恨みながら育つ。刑務所のような全寮制のお嬢様学校に入れられ、激しいいじめに遭っており友人は一人もいない。1986年に死亡した右代宮真里亞の日記を紐解いて現実逃避を行うことが唯一の救い。日記を書いた少女の導きで悪魔を使役できるようになるが、描写が事実か本人の妄想かは明らかではない。1998年の縁寿は相続財産の奪取を目論む母方の一族に身柄を狙われていて、追っ手を避けつつ1986年の真実を求めて事件が起こった島へ向かう。その後1998年中に死亡。
・真里亞の日記によると、彼女の生活は児童虐待(ネグレクト)に近いものがあったが、本人はその境遇を好意的な解釈で捻じ曲げて凌いでおり、それが劇中では魔法と称されている。
・真里亞は母親からライオンのぬいぐるみ「さくたろう」とウサギの楽隊人形をプレゼントされており、真里亞にとってイマジナリー・フレンドだった。
・EP4 の設定では、1998年現在、真里亞名義の2本のボトルメールが発見されている。筆跡は真里亞のものではない。
・縁寿が事件被害者の遺族と面会したところ、一部の事件被害者の元に事件発生前日の日付で貸し金庫のカードなどが送付されており、その貸し金庫には現金が入っていることが判った。幼い縁寿の元にも送付されていた。
・右代宮金蔵はゲーム開始時から死亡している。
・島には18人以上いない。
・1986年の事件は主人公が犯した罪が原因だが、主人公には身に覚えがない。
・主人公は知らなかったが、彼は母の実の子ではなかった。
・EP4で1986年の事件を唯一生き残った主人公だが、魔女ベアトリーチェは島には他に誰も居ないのにこれからあなたを殺す、私は誰?と呼びかける。
大体こんな感じである。
メタ世界での主人公対魔女の論戦の新たな趣向としては、主人公が青字で宣言した内容に対して魔女が最後まで赤字で論破できなければ主人公の勝ち、というルールが導入されている。
1998年の描写においても縁寿の仲間として悪魔が登場するので、縁寿視点の信憑性もまた磐石ではないことは留意しておきたい。
新島の布団屋で何かを見つけて縁寿が驚愕する場面があるが、これは楼座の手作りのはずの「さくたろう」が商品として置かれていたのではないかと思う。
(手作りが嘘だったのかもしれないし、真里亞の喜びようを見て楼座が自社で商品化したのかもしれない。)
「さくたろう」が魔法で擬人化して幻想世界の住人になっているところや、シエスタ姉妹にウサギの耳が付いていてマーチング・バンドの衣装を着ているところから考えると、シエスタ姉妹はウサギの楽隊人形の擬人化であることが濃厚。
だとすると、魔法を使って一族を殺している幻想世界の住人たちは真里亞の妄想が投影されていると考えるのが妥当だろう。
真里亞がイマジナリー・フレンドを持っていることを知っている者が犯人であることの示唆か。
私も指摘していた金蔵死亡説は公式にあっさり認められてしまった。
ということは、EP1 から EP3 までにおいて登場人物が金蔵と接触している描写はインチキ(あるいは1986年10月4日より前の出来事)で、彼らはその間別の行動を取っていることになる。
金蔵が元々死亡しているなら当然知っているべき長男夫妻と使用人たちの言動や描写もインチキまみれで、彼らは偽証を繰り返しているということになる。
金蔵の死亡宣言で一人減って、事件時の島の滞在者は17人と宣言された。
これで EP1 から EP4 の事件を人間犯人説で考えるにはどうすればいいか。
一つ考えられるのは、もう一人最初から死んでいる人物が居て、誰かが一人二役を行っていること。
その候補としては、ファンタジー描写の激しい紗音・嘉音の二人が適当だと思う。
(容姿の違いもファンタジー描写の一種だと考えれば辻褄が合う。)
そこに未知の人物 X を加えて、16人+ X =17人とする。
紗音・嘉音と X が共犯であれば犯行はかなりやりやすい。
紗音・嘉音の死体は元々死んでいるものを用意することで偽装でき、死体消失の謎や死んだ嘉音が生き返った謎も説明できる。
更に紗音と譲治、嘉音と朱志香のカップルも恋愛関係ではなく共犯関係であると考えると、一層強力だ。
カップルの共犯関係はないとしても、EP ごとに共犯相手が異なると考えてもいい。
EP4 で描写されている事件の詳細についてだが、戦人視点では隠し屋敷の牢獄や地下通路が描写されておらず実地確認をしていないので、狂言である可能性を考えたい。
牢獄から脱出後に魔法で殺されたことになっている被害者たちは、実際には井戸方面に向かう途中で嘉音あたりに殺されたのではないか。
(この嘉音は、殺人の前に嘉音の振りをやめたか、人格としての嘉音が消滅したため、比喩的に「死亡した」。)
園芸倉庫で首を吊っていた二人は、首を吊る演技を行うはずだったのが、犯人によって首を吊られたと解釈できる。
主人公は倉庫のシャッターに鍵がかかっていると思って確認していないが、実際には鍵がかかっていなかったかもしれない。
その他の被害者たちも、狂言のつもりで居たら殺されてしまったと考えれば何の不思議もない。
この作品、地の文で嘘をつきまくりだから、方程式のように解を一意に絞ることができない。
どの描写を信用してどの描写を切り捨てるのかによって解答が変わってくる。
どれだけ解答のパターンを発想できるか、ってのがポイントだと思う。
作中でも暗示されているが、一般的な推理小説のように1つの答えに収斂する論理展開を求めるのではなくて、様々な想像、空想を楽しんで欲しいというのが作者の意図に違いない。
作品全体のプロットについての私の予想は、EP3 をプレイした時からあまり発展していない。
あらゆる殺人行為を阻止しても、自然災害(地震、海底火山の噴火、土砂崩れ等)によって島に居る人間は全滅。
全員が隠し屋敷等に避難して自然災害を生き延びても、金蔵が死んでいるので遺産争いが起きて親族同士の関係が険悪になる。
結局、ハッピーエンドは困難。
真実が魔女幻想に隠されている方がまだマシだった。
そんなところじゃないか。
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