7 décembre 2008

DVD 『カリガリ博士』

『カリガリ博士』( Das Kabinett des Doktor Caligari )は1920年に公開されたドイツ映画。
トーキーが発明される前のものなので、モノクロのサイレント作品だ。
古典的映画の名作として名高いのだけど、ずっと観てなかった。
学生時代、大学図書館に LD があって観ようと思えば観れたのに。
著作権が切れているので近年500円の格安 DVD として商品化されていて、私はそれを買って観た。
ついさっき知ったのだけど、有志の翻訳家が日本語字幕をつけたものが web で公開されているので、買う必要は別になかった……。

この作品はサイコ・サスペンス映画やサイコ・ホラー映画の元祖とされている。
ストーリーは、ある事件に巻き込まれた一人の青年の回想という形で語られる。
青年の故郷の町に祭の巡業がやってきて、その中でカリガリ博士と名乗る男が見世物を開く。
その見世物というのは、カリガリ博士の下僕である夢遊病患者チェザーレを目覚めさせ、観客の未来を予言するというもの。
青年とともに見世物を観に来ていた彼の友人が自分の寿命を尋ねてみると、明日の夜明けに死ぬという。
予言どおり、青年の友人は何者かに殺されて死んでしまう。
その前に町の役人が殺されているのだが、その役人はカリガリ博士の興行申請に対して邪険に応じた男だった。
青年はカリガリ博士が友人を殺した犯人だと断じて、警察に通報するのだが証拠がない。女性を殺そうとした男が警察に捕まるが、連続殺人に便乗した犯行だった。
青年はカリガリ博士の住む家を監視する。
その間に、青年が結婚を申し込んでいた女性をチェザーレが殺そうとするものの、彼女の美しさに魅了されてか、彼女を連れ去って逃げてしまう。
町の人々に追跡されて、チェザーレは道中に女性を置き去りにして逃亡。
女性はチェザーレが犯人だと断ずるが、監視していたのでありえないと青年は思う。
逃げたチェザーレは町外れで死体となって発見される。
警官を連れて青年がカリガリ博士の家を訪ね強引に押し入ると、トリックが判明する。
窮したカリガリ博士が逃げた先は、精神病院だった。
ここで青年はカリガリ博士の正体を知るのだが、最後にどんでん返しがあって映画は終わる。

この作品の一番の特徴は、ドイツ表現主義と評されている背景美術。
恐らく全てがセットと書割の中で撮影されているのだが、シュールレアリスム絵画のように建物がことごとく傾いでいて、歪んだ形をしている。
壁や柱には奇抜な紋様が描かれている。
地面には傾斜がつけられていて、奥行きのある立体的なものになっている。

次に特徴的なのがコントラストの強い画面づくりで、人物の顔は白粉を塗ったように真っ白け。
その中でチェザーレは目の周りを黒く塗り睫毛がパッチリな化粧が施されていて、人ならざる者のような雰囲気を漂わせている。

物語の筋立ては現在の観点からすると取り立てて珍しくもないし、展開が唐突でギクシャクしている。
その一方で物語が二重構造になってたり、時系列が一直線になっていなかったりと、古い映画にしては複雑なのではないかと思う。

この作品を観て強く感じたのは、酩酊感。
体調が悪かったわけじゃないのに、視界がユラユラとして落ち着かない。
歪んだ形の背景美術のせいだろうか。
だとしたら、映画の製作者としては「してやったり」だろう。

前の記事:「『トラスティベル ~ショパンの夢~』考察

次の記事:「DVD 『カラーで見る第2次世界大戦』

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://meta-metaphysica.net/mt/mt-tb.cgi/409

コメント(4)

 カリガリ博士ですか。また、えらい古典的な作品の登場ですね。

>この作品はサイコ・サスペンス映画やサイコ・ホラー映画の元祖とされている。

 そうですねぇ。なんせ映画が娯楽作品、芸術作品として態をなし始めた時代の作品ですから・・・。

 で、SF映画の元祖とされているのが、同じくドイツで制作された「メトロポリス」なわけで、2001年のベルリン映画祭で上映された最新復元版が紀伊国屋書店からDVD化されて出ています。

 同時代のドイツ作品ですので、カリガリ博士同様に、背景はいかにも書き割り、という感じですが、それが非現実感を際だたせる効果となっているようにも思えます。

 今日の眼で見ると、役者の演技は象徴的・様式的な表現と感じられるもので、舞台劇的な印象を受けます。

 ストーリーは単純で、いわば勧善懲悪的内容となっているのですが、なぜか見始めると引き込まれてしまい、最後まで見続けていまいます。

 定価6,300円と、今時のDVDとしてはお高い設定となっていますが、小生にとってはそれだけの値打ちはあると思っています。

 この映画の中で工場労働者の様子が描かれているシーンがあるのですが、チャップリンの「モダンタイムず」での描写を彷彿とさせるものです。
 違うかぁ、「モダンタイムズ」の方が後やから、チャップリンが影響を受けたのかな?
 

フリッツ・ラングの『メトロポリス』は学生時代に図書館で LD を観て以来のファンで、紀伊国屋書店の DVD 版も当然のごとく所有しております。
そのうち書きます。

あのダイヤル合わせみたいな労働は、本当にシュールですね。
どういう目的のどういう原理の機械なのやら。
設計者はインターフェイスを机上の操作盤サイズに小型化しろと言いたい。
(象徴にマジツッコミしてはいけません)

 ご紹介のあったサイトで見ましたが、画質が今イチでしたねぇ。ストーリーの組み立てはご指摘のとおり複雑ですよね。

 酩酊感という表現がなされていましたが、終始画面がブレているのが原因ではないかと・・・。

DVD でもコマがぶれてますね。
確かに、大画面で観るよりかは観やすいです。
『メトロポリス』や『戦艦ポチョムキン』あたりだとぶれてないのになあ。
使ってるカメラの駆動装置の精度が低かったのか、フィルムの加工精度が低かったのでしょうか。

コメントする

プロフィール

空疎な中身のまま、サイト運営10年経過。

文学部出身ですが文学は苦手です。

Twitter

twitter.com/nemuribito/

過去の記事

最近のコメント