10 novembre 2008

『 Memories Off #5 とぎれたフィルム 』

SuperLite2000恋愛アドベンチャー Memories Off #5 とぎれたフィルム メモリーズオフ#5 とぎれたフィルム [恋愛ゲームセレクション]

過去に交際していた女性や現在交際している女性への未練が原因で、主人公がウジウジと悩むストーリーが特徴的なノベル型アドベンチャーゲーム「 Memories Off 」シリーズ。
その5作目が『 Memories Off #5 とぎれたフィルム 』。
2005年の作品である。
主人公の初期状態が、「彼女と死別」→「彼女はいるが関係が冷え気味」→「過去に理由も判らず彼女と別れた」→「突然彼女から別れを告げられる」という順番で進んできたこのシリーズ。
今度は「主人公が交際中の女性に別れを切り出す」パターンかと思いきや、違った。
なんと今作の主人公は、過去でも現在でも女性と交際しておらず、女性への未練で悩まない!
このシリーズでは画期的なパターンだ。
でも、やはり「 Memories Off 」の冠を頂いた作品だけあって、主人公はウジウジと悩む。
では何が原因で悩むのかというと、「過去の男」なのである。
もちろん、主人公が同性愛者だという意味ではない。

今作の主人公は大学生の青年、春人。
大学に入学した彼は、高校時代に映画制作を行っていた仲間たち3人とともに映画制作サークルを作る。
しかしその直後、彼の親友でありライバルであり、仲間たちのリーダーだった男、雄介が不審死を遂げてしまう。
死の直前、雄介は執筆中の脚本の主演女優にうってつけの人物が映っているとして、春人に「ファム・ファタル」と題されたビデオテープを渡していた。
そのテープには、雄介に対して殺人予告をする少女の姿が映っていた。
雄介の死後、ショックを受けたサークルのメンバーたちは映画制作をやめ、サークル部屋で馴れ合う日々を送っていた。
しかし春人が2回生を迎え一人暮らしを始めた春、サークルのメンバーたちの前に一人の女が現れる。
「ファム・ファタル」の少女、麻尋だった。
彼女はメンバーに対し、雄介の遺した脚本で映画を作ろうと持ちかける。
しかし彼女は雄介の死に関わっているため、メンバーは映画制作を拒否する。
この出来事をきっかけとして、春人の運命は大きく動き出すことになる。

シナリオは大まかに、主人公に関わる5人の女性と主人公が恋愛関係になるパターンがある。
うち3人のシナリオでは麻尋の申し出に乗り、主人公が雄介の遺した脚本で映画を作ろうとする。
残る2人のシナリオでは、麻尋の申し出を断り、主人公のアルバイト先で出会った女性と交流を深めていく。

作品全体を貫くキーパーソンは、亡くなった雄介を別とすると、雄介の妹であるあすかである。
彼女は雄介の死後、絶望に襲われ塞ぎこんでいたが、春人の友人である修司と春人の尽力で立ち直った。
以後、あすかは春人に依存して好意をぶつけてくるのだが、春人は彼女に対して恋愛感情を抱いていない。
あすかに対して恋愛感情を抱いているのは修司なのだが、彼女は修司に対して恋愛感情を抱いていない。
ここで三角関係が成立している。
一方、春人のアルバイト先であるハンバーガー店には、あすかも勤めている。
別のアルバイト先である家庭教師の生徒は、あすかの親友である。
ハンバーガー店の従業員と交際を深めるにせよ、家庭教師の生徒と交流を深めるにせよ、あすかとの三角関係が成立する。
あすかとの関係をどう処理するのかが、主人公に課せられた問題だ。

ややこしいことに、あすかは兄の死に絡んだ麻尋を激しく嫌悪しているうえ、映画制作を拒絶している。
雄介の死後、憔悴するあすかの姿を見た春人と修司は、あすかを二度とこのようにさせないと誓い合っていた。
麻尋の申し出どおり映画制作を行うことはあすかを傷つけることになり、修司との友情を失うことになる。
かといって映画制作を行わないのならば、麻尋を傷つけることになるし、雄介の遺志を果たすことができないし、「人々を幸せにする映画を作る」という目標を抱いていた主人公の成長もない。
主人公のジレンマは従来の単純な恋愛から、恋愛と友情と将来が絡み合ったものへと深まっている。

主人公が置かれたこれらの状況下では、恋愛アドベンチャーゲームにおいてよくあるような「主人公がヒロインと相思相愛になれば問題が解決してハッピー・エンド」というパターンは無理である。
主人公とヒロインが相思相愛になってからもなお、物語に一山あるのが『 Memories Off 』シリーズの醍醐味だが、本作ではその一山がより強くなっている。
特に顕著なのが麻尋のシナリオだ。
主人公視点で始まる物語は、春人と麻尋が相思相愛の仲になっても悲劇的結末を迎えてしまう。
ここで時間が再び物語の冒頭に戻り、視点が麻尋に転換する。
これにより、主人公が居ない場でヒロインや他の登場人物が何を思い何をしていたのか、そして主人公視点では明かされない疑問・疑惑の答えが明かされていく。
また、主人公が居る場での麻尋の言動にどんな意図があったのかも判明する。
そして再度視点が春人に転換。
事態の真相を知って足掻き続ける春人は、ハッピー・エンドへ向かう。
この二重の結末に加えて、麻尋視点でもなおバッド・エンドへの分岐があり、主人公と麻尋が二人の世界に耽溺すると痛々しい結末を迎えるのを見れば、本作が「主人公とヒロインの恋愛=勝利」としていないことは明らかだ。

麻尋ではない、とあるヒロインのシナリオも然り。
主人公はサークルのメンバーへの関わりをやめて恋愛に勤しむのだが、その結末はまるで主人公への罰であるかのようだ。
そして主人公を通じてプレイヤーは、ヒロインが抱いていた苦悩を自ら体験することになる。
毀誉褒貶がありそうな、冒険的な試みだと思う。
恋愛物語を敢えてハッピー・エンド一辺倒にしない、こういう試みを私は評価したい。

恋愛と友情と、映画作りへの夢。
この三点セットを満たすという厳しい条件をクリアしなければ、主人公は幸せにはなれない。
人間が生きていれば誰かを傷つけることは不可避だが、それでも二人の恋愛のために恋愛以外を切り捨ててしまえば大きな代償を払わなければならない――それが本作の主張なのだろう。

本作のシナリオは伏線が巧みに張られよく練られているが、あすかのキャラクター設定も練られている。
兄が死んで憔悴していた彼女の姿を見れば、「お兄ちゃん子だったから、ショックを受けたのだろう」「兄を死なせた人間である麻尋を嫌って映画作りに反対しているのだろう」と想像するのが普通だ。
だから主人公もそう考えてあすかに説得を試みる。
しかしその想像はミスディレクションである。
あすかの本心が違う以上、説得がことごとく失敗するのも当然なのだ。

脇役の良さは「 Memories Off 」シリーズの特徴だが、シリーズを通じて主人公の助言役を務める男、稲穂信は相変わらずいい味を出している。
主人公視点ではゲストキャラクターのように存在感がなく「あれっ?」と思わされるものの、実は物語の根幹に関わっていて驚かされる。
主人公がサークルへの関わりをやめた場合は、従来どおり主人公の良き助言者となる。
シリーズ恒例の歴代ヒロインのゲスト出演はなくなったが、前作でチョイ役だった木瀬歩が本作でも登場。
ギャグ要員としてだけでなく、主人公が映画制作に挑む場合にはスタッフとしてもストーリー展開の繋ぎ役としても重要な役割を果たしている。

それにしても、本作をプレイしていると身につまされることが多い。
悪意がないのに他人の心を傷つけたり。
余計な一言を言ったせいで人間関係が崩壊したり。
相手の発言を言葉どおりに受け取って失敗したり。
順調だと思っていたらバッド・エンドに突入したり。
グッド・エンドとバッド・エンドへの分岐が紙一重だったり。
人生ってのは地雷原を歩くようなものだな、としみじみ思う。
「ゲームと現実を混同してる」などと指弾されそうだが、本作には妙にリアリティを感じる。

ところで、本作には女性ユーザーを取り込もうとしている節がある。
女性視点でのシナリオ展開が組み込まれているだけではない。
男性キャラクターのデザインがボーイズラブ系なのだ。
雄介は長髪に涼しい眼にメガネ姿。
地肌の上にワイシャツを羽織り胸元をはだけている。
初めて見たとき「何じゃこりゃ!?」と驚いた。
修司は女の子のような顔。
主人公の春人は精悍な顔つきのイケメンである。
顧客の圧倒的大多数であろう男性ユーザーには、ちょっと抵抗があるかもしれない。

以前のシーンで廃屋を掃除したのに、後のシーンで背景画像が掃除前になっている凡ミス。
以前のシーンで一緒に観た映画について、後のシーンで相手に知ってるかどうか訊く凡ミス。
首長族のような人体デッサン。
ケチの付け所はある。
しかしビデオ映像を模した演出やマンガ的演出など、従来のシリーズ作品よりも演出に工夫があるし、プロットを複雑化することによって、プレイヤーの意表を突いたりキャラクターの内面を掘り下げたりすることに成功しているのを見ると、大した問題ではない。

『 Memories Off #5 とぎれたフィルム 』――それは、優しいがゆえに傷つけあう若者たちの青春物語。
シリーズ最高傑作であり、ノベル型アドベンチャーゲームの秀作だ。

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Dormeurさん

 最近はゲームネタがつづいてますねぇ。

 以前のような、おでかけネタとかはないですか?

 よけいなお世話かも知れませんが、こんな情報はいかがでしょう?

http://www.city.takatsuki.osaka.jp/db/jinji/db1-saiyo.html#20saiyou-kongo

別にゲームばっかりやってるわけではなく、溜まってるネタを消化しているだけなんですけどね。(テキストファイルに書き溜めてます)
おでかけネタと言っても、病院とか葬祭場とか火葬場とか運転免許試験場とか、辛気臭くてあまり面白くないネタしかないですし。

情報ありがとうございます、が、官職には興味がございませんで。
そういや親戚の外務官僚がいつの間にか辞めてたなあ。

>情報ありがとうございます、が、官職には興味がございませんで。

 やっぱりよけいなお世話でしたか。失礼しました。

>別にゲームばっかりやってるわけではなく、溜まってるネタを消化しているだけなんですけどね。(テキストファイルに書き溜めてます)

 でも、ここまでの記事だけを見てると、日がな一日、自室に引きこもって、ひたすらPCゲームに没頭しているという人物像がイメージされてしまうのですが・・・。

ノベル型アドベンチャーゲームは20時間以内で終わるくらいのボリュームなのが多いので、日がな1日やってるならえらい数になりますね。
この半年でクリアしたのって、多分4タイトルくらいしかないと思います。
ゲームをしない一般の方からすると、それでも充分多いと思われるかもしれませんけど。

1年以上未開封で放置してるのがまだ6タイトルほどありますが、やる気が湧きません。
(メモオフシリーズの外伝3タイトル中2タイトルを含む。)
そういやニンテンドー DS 本体も未開封のまま1年以上死蔵してますね。

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