13 janvier 2008

2007年山陽の旅 尾道編(1)

2007年9月21日、尾道の町を探検する。

まず宿である「グリーンヒルホテル尾道」を出て、朝食を食べに駅方面へと歩道橋を歩く。

昨夜の写真にもちらっと映っているのだけど、フェリーターミナルの北側に「しまなみ海道館」という建物がある。
今治から尾道まで、瀬戸内海を自動車で渡れるようになったのを記念して建てられた施設らしい。
観光案内・休憩所・イベントホールを兼ねているものの閑散としていて、地方にありがちな、無駄金を使った施設の香りがプンプンする。
その北側に線路に隣接してこの付近では一番高さがあり新しいのではないかと思われる建物がある。
2階までが広島の百貨店「福屋」の支店や飲食店などの店舗が入居し、3階以上は住居。
2階の喫茶店は実は有名な尾道の喫茶店の支店らしいのだが、知らずにスルーしてしまい、1階に入っているミスタードーナツでの朝食にしてしまった。

胃袋が満たされたところで、駅のコインロッカーに荷物を預け尾道探検を開始する。
目的は大方お察しのことでしょうが、『かみちゅ!』と大林宣彦の映画のロケ地めぐりでございます。

その前に、尾道の町の地形を大まかに説明しよう。


大きな地図で見る

これから探検するのは、大林宣彦の映画でおなじみの、尾道でも古くからある市街地だ。
瀬戸内海を地図で見ると、四国と中国地方の間を塞ぐように島々が並んでいるところがある。
その北の端の中国地方の海岸にあるのが尾道の町。
古くは海上交通の中継地点として栄えたものと思われる。
対岸にある島が向島(むかいしま)、向島と尾道の間、瀬戸内海が非常に狭くなっている部分が尾道水道。
陸地は東西方向に狭い平地があってそこには主に商店が立ち並んでいる。
その北側に国道2号線があり、さらに北側は国道2号線に平行して JR 山陽本線が走っている。
そこから突然急斜面になり小高い山が東西方向に数個並ぶ。
それらの山の中で一番尾道駅に近い千光寺山の斜面が「坂の町」として有名な地域で、戦前から建っていると思われる民家が数多く並び、古寺がいくつも集中している。

といったところで、Web で入手したロケ地マップを手に、探検に出発する。
(このロケ地マップは本当に重宝しましたので、この場を借りて御礼申し上げます)

まずは駅の北側から。
尾道駅北出口の前の道を西に歩いていくと道がY字に分かれている。
その分岐を右側に曲がり肉屋の前を通過して左手に時計店が見えたら、右手に石段がある。

尾道と言えば石段、石段といえば尾道。
気分を高めつつその急な石段を登ると、通称「ガウディハウス」と呼ばれる古い民家がある。

斜面の狭い土地にアクロバティックな建て方をしているということで有名なこの家。
『かみちゅ!』だけでなく、どの作品だったか忘れたけど大林映画でもこのアングルで登場してた(確か左手の道から登場人物が歩いてきてた)。
人が住まなくなって久しかったのを、最近地元の有志の人が買い取って修復しており、その模様は「尾道の空き家、再生します。」という blog で公開されている。

石段を降りて駅へと戻り、国道2号線沿いに東へと歩く。

『転校生』で、和美と体が入れ替わった直後の和夫が家へと歩いていくシーン(画面がモノクロからカラーへと変わるところ)の踏切がこれじゃないかと思って撮影。
あのシーンでは遮断機がなくて木の看板だけの古い踏切だったけど……。

駅方面に少し戻り、ちょっと新しい感じのする歩道橋に登って駅方面を撮影。
『かみちゅ!』ではこのアングルで線路が単線に書き換えられていた。

線路を越えて坂を上ると、土堂小学校がある。
『かみちゅ!』で主人公たちが通う「日の出中学校」のモデルだ。
大林宣彦の出身校でもあり、『ふたり』で主人公が通う高校として登場してたような覚えがある。

『かみちゅ!』で、風邪をひいたゆりえがタクシーで母親に迎えに来てもらうシーンのアングル。
ここから山側は狭い石段なので、自動車はこのあたりまでしか入って来れない。
不便だし高齢者には体力的に辛いしで、斜面の民家に住む人がどんどん減っていくのも合点する。

息を切らして石段を登り、ようやく小学校を見渡せるところまでやってきた。
地元の人に挨拶をしながら、北側へ回り込む。

なおも石段を登っていると、家の前を掃除していたおばちゃんに話しかけられた。
「どこに行くの?」
「この上です」
「この上、何にもないよ?」
「いや、写真を撮りにきたんで……」
同じような人間が多数居るのだろう、それ以上は追及されなかった。

民家の屋根が邪魔だけど、『かみちゅ!』で頻繁に登場する屋上。
二宮健児が書道部を設けてた場所だ。
出入り口、時計、ハシゴ、配管すべて作中そのまんま。

屋上を撮影できたので、一旦歩道橋まで戻る。
まだ探検は始まったばかりなのに、暑さで汗だくだわ、脚は疲れるわで、早くも挫けそうだ。
土堂小学校の正門前まで来たところで、花を持った初老の男性に「ロケ地めぐりかい?」と話しかけられた。
話によるとこの人は国道沿いの提灯屋のご主人で、大林宣彦がロケを行ったときは手伝ったらしい。
少し前に奥さんに先立たれ、これからお墓参りに行くところとのことだった。
「坂がすごくてもう挫けそうですわ」と言ったら、「それが尾道だからね」とあっさり言われてしまった。

歩道橋から斜面の方を見上げると、『転校生』の和美の家と思しき洋風の民家を発見した。
窓が板で塞がれているので今は誰も住んでない様子だ。
道が入り組んでいて行き方が判らない上に、坂道を登り下りして探し回る気力がなかったので接近するのは断念した。

国道沿いに東方向に歩くと、長いスロープのある歩道橋がある。
『転校生』で和美と体が入れ替わったことに気づいた和夫が、自転車に乗って和美の家に行く途中に上っていった歩道橋。
結構勾配がきついのに、自転車に乗ったまま上るのは小林聡美も大変だったろう。
作中とは違って、歩道橋の上は自転車や原付がいっぱい止められている。
駅前に駐輪場がないから、通勤・通学客がここに止めていってるのかと推測。

歩道橋を渡って、光明寺へ。
江戸時代か明治時代の横綱が髭を埋葬したという古寺。
折角なので、故人の冥福を祈る。
冥福なんてものが有るとは信じていないけど、有るとすれば故人がそうあって欲しい。
そんな気持ち。

『かみちゅ!』でゆりえの下校シーンで登場してたと思われる場所。
土堂小学校からゆりえの家がある(という設定の)向島まで行くのに遠回りになるので、実際にはわざわざここを通ることはないはず。

少し下ってからくねくねした路地を東方向に進むと、石垣が現れ、タイル張りをした瀟洒な道が現れた。
石段には海方向に座りスケッチに勤しむ人が多数いた。

「志賀直哉旧居」という案内板に誘われて再び路地に入ると、文学公園があった。

懲りもせず石段を登っていくと、古い長屋が1軒。
この長屋の写真で言うと右端が、若き日の志賀直哉が住んだ部屋。
現在では長屋丸ごとが資料館化されていて、写真左手の引き戸がその入口である。

内部は壁がぶちぬかれ改装されているが、志賀直哉が住んだ部屋はそのまま保存されている。

部屋の入口からいきなり竈のある土間になっている。
ステンレスの流し台もガスコンロもない時代のものなので台所はこんな感じ。
風呂も洗面台もない。
便所は多分、外だろう。
家出したボンボン息子がよくこんなところに住もうと思ったもんだ。

旧居を出て石段を下り、少し離れた場所にある「おのみち文学の館」を訪ねる。
ここは古民家を改造せずにショーケースを並べ、尾道ゆかりの作家たちの品々を展示している。
メインは女学生時代を当地で過ごした林芙美子。

文学資料館なのに『宇宙戦艦ヤマト』の絵が展示されていて吹いた。
しかもデスラーがスターシャに電話で求婚してる。
『怪傑黒頭巾』といった少年向け娯楽小説で有名な尾道出身の小説家、高垣眸(つボイノリオではありません)が著した小説版『宇宙戦艦ヤマト』なのであった。
タイトルに「熱血小説」と添えられてあるけど、この年になるまでそんなジャンルがあるなんて知らなかった……。

これはどこのロケシーンという訳でもないけど、海の見える坂道。
救急車も来れないから、急病になったら大変だ。

石段に腰掛けて、風景をスケッチする人々。
どれだけ急な坂に家が建ってるかお分かりいただけるかと存じます。

『かみちゅ!』スポット?
見覚えがあるような、ないような……。

時間はお昼を過ぎているのだけど、全然腹が減らない。
相変わらず真夏並みに気温が高い上に坂道を上り下りしているものだからとにかく暑くて、飲み物を飲んだらそのまま汗腺を通じて玉の汗となって出てくる。
曇り空なのがまだ救いではあった。
だけど手持ちのペットボトルの飲料は早々に尽きる。
途中の文学公園の水飲み場で水分補給してもすぐ汗になってしまい、喉が渇く。
ここに至って飲み物の自動販売機に初めて出会い、ペットボトル入りのスポーツドリンクを購入して水分と糖分を補給する。
そして石段上りを再開。

地図を見誤っていたようで、いつの間にか千光寺の境内に入っていた。

尾道大橋まで見渡せる。
上から下に張られたロープは、千光寺山ロープウェイのもの。

この巨石のある高台は多分、『転校生』で和美と和夫が変な男に絡まれた場所だと思われる。

結局ロープウェイで来るような頂上に徒歩で到着してしまった。
土産物店でビン入りのコカ・コーラが売られていたので、記念に飲み干す。

ロープウェイにて下山。
ちなみにこのロープウェイは『転校生』の冒頭の、8mmフィルムの映像に登場している。

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