特急まりもの寝台で目覚めると、既に石狩平野であった。
時刻は5時を周っている。
寒い。
急いで着込む。
5時50分、札幌着。
しかし、こんなに早く着いても何もやることがない。
何となく、プラットホームに停車している車両を撮影してみる。

さらには、喫煙コーナーで一服してみる。
札幌駅のプラットホームの隅にある喫煙コーナーは、近畿の駅に設置してあるそれと違い、四方を透明の板で囲まれている。
隔離、という印象が一層強い。
釧路駅の場合はプラットホームに喫煙コーナーがあったかどうか記憶にないが、駅のターミナルビルには改札そばに同じく透明の板で囲まれた喫煙コーナーがあった。
空港の分煙に近い印象だ。
汚染された空気が滞留しているので臭くて気持ちが悪い。
タバコなんて体に悪くて周囲に迷惑をかけるものを吸うな、と教育する狙いもあるのではないかと邪推してしまう。
まあ、それはそれで仕方ない。
朝食を食べさせてくれるコーヒー屋でも開いていないかと駅ビルをうろうろするが、どこも開いていない。
改札の中にある UCC のコーヒー屋は6時30分からの営業。
改札の外でドトールコーヒーを見つけたが、7時からの営業だった。
さすがに200万人近い人口を有する都市の中心駅だけあって、駅ビルを歩く印象は大阪駅や名古屋駅と何ら変わらない。
看板や天井から下がっている北海道日本ハムファイターズの垂れ幕がなければ、東京都内のターミナルビルと言われてもだまされてしまうだろう。
早く落ち着きたかったので、入場券を買って改札内の UCC で朝食を摂ることにする。
食べ物のメニューはおにぎりという一風変わった店だった。
腹ごしらえを済ませると、市営地下鉄のさっぽろ駅へ向かう。
札幌市営地下鉄といえば、ゴムタイヤで走行することで名高い。
しかも、中央にあるガイドレールに沿って走るという、モノレールに近い世界でも珍しい方式だ。
従って乗り心地もモノレールに近く滑らかな感じがする。
さらに車両同士の貫通路に引き戸がなくそのまま直結しているところも大阪モノレールのそれと同様だ。
さらに特徴的なのは、網棚がないこと。
テロ対策か、忘れ物の保管費用を減らすためか。
偶然にも、観光で来た初老の夫婦と思しき乗客の夫の方が、網棚に荷物を載せようとするのを妻が寸前で止める、というシーンを目撃した。
止められなかったら座っている乗客の頭上に荷物が直撃するところだった。
そんなこんなを観察しているうち、東豊線の福住駅へ到着。
通学途中の女子高校生が目立つ。
札幌駅周辺もそうだったが、女子高生のスカートが通り一遍等に短い。
大阪だと、短くする着方、長くする着方両方見られるものだが……。
田舎の人間はやはり「頑張ってしまう」ものなんだろうか。
バスを待つ時間が30分ほどあったので、ちょっと足を伸ばして札幌ドームまで歩いてみる。

駅から幹線道路沿いに10分ほど歩くと札幌ドームに到着する。
イベントの予定がないせいか、辺りはひっそりとしている。
散歩をしている人の姿が一人、二人認められる程度。

札幌ドームは野球を行うときは人工芝。
サッカーを行うときは、屋外で養生されている天然芝のフィールドを中に引き込む。
今は天然芝のフィールドは屋外にあった。
その周囲はすり鉢状になっていて、芝生が植えられていた。
福住の駅に戻り、バスに乗る。
整然と造成された住宅街の長い直線を登っていき、バスはそのまま羊が丘展望台に入っていく。
門のところで職員が乗車してきて、乗客から入場料を徴収するというシステムだった。
門からなおもバスは上り坂をくねくねと登り、レストハウスなどが立ち並ぶ広場で停車した。

札幌といえばお馴染み、クラーク博士像がここにある。
クラーク博士といえば、札幌農学校で教鞭を執り、帰国後は『2001年宇宙の旅』などを執筆して SF 作家として活躍、再び来日してヤクルトスワローズと近鉄バファローズでプレーしたことで有名だ。
色が黒いので多分そうだと思う。
その背後には札幌の町並みが広がる。
札幌ドームも見える。
昨日と比べると、今日は曇りがちの天気だ。

撮影地点の背後には、2004年、北海道日本ハムファイターズが札幌ドームで初めて公式戦を行った際のチームメンバーの手形を並べたモニュメントがあった。
羊が丘、という名前のとおり、ここでは羊の放牧を行っているのだけど、残念ながら早く来すぎて羊の放牧時間はまだだった。
残念だが時間がない。
羊の肉のソーセージを食べて我慢することにする。
再びバスで福住駅に戻り、地下鉄で東区役所前駅まで乗る。
駅からてくてくと歩き、サッポロビール園に到着。
なお、札幌駅から直接サッポロビール園に行きたい場合は直通バスに乗った方がいい。
サッポロビール園というと、個人的に郊外にある工場跡地というイメージがあったのだが、実際はそこそこの市街地の中にあった。
隣にはトイざラスやショッピングセンターもある。

まず、サッポロビール博物館を見学。
ここはサッポロビールの歴史やビールの製法を紹介する施設で、往年のビール容器や広告ポスターなど、ゆかりの品を展示している。
団体で訪ねると、女性のガイド職員が案内してくれるらしい。
ちょうど朝鮮人の団体ツアー客が来ていて、ガイドの内容を逐一通訳のおばちゃんが翻訳していた。
朝鮮国営放送を間近で聞いているような気分ハスニダ。


博物館以外にビール園に存在する施設は、全てレストランだ。
総合受付のある建物で人数を申告すると、いくつかあるレストラン施設の一つを指定される。
黙々と羊肉を焼いて食う。



札幌ドームからは離れているのだが、なぜか北海道日本ハムファイターズの室内練習場が隣にあった。
直通バスに乗り札幌駅に戻る。
そこからバスを乗り換えて、雪印史料館へ向かう。
史料館前などというようなバス停がないので、最寄のバス停から数百メートル歩くことになる。
周囲は工場地域といった様子だ。
雪印史料館自体、雪印(現:メグミルク)の工場敷地内にある。

見学は無料だけど予約が必要。
平日で観光シーズンが過ぎているからか、見学者は少ない。
私と同じ見学ツアー客は1組だけらしい。
ツアー開始、と思いきや、なぜか私だけ呼び止められ、高卒でそのまま就職しましたー、みたいなメガネをかけた純朴そうな職員のお姉さんと二人きりの見学になる。
「大阪から来られたんですね。北海道は涼しいでしょう」
「うーん、昼間、日光に当たってると暑いし、日陰に入ると涼しいし、夜になると冷え込んで寒いし、中途半端ですねえ」
などと会話を交わす。
いやあ、雪印は素晴らしい。
食中毒事件を起こしたのも許す。
と思ったが、お姉さんは途中で居なくなり、もう1組の見学ツアー客と合流することになってしまった。
車椅子に乗ったご老体がいらっしゃるので、階段を避けていただけだった。
がっかり。
展示室には、かつてバターやチーズを作るのに使っていた実際の器具と、現在の製造工程を解説したミニチュア模型が展示されている。
じっくり見たいところなのだが、ガイドの案内で先へ先へと促される。
おまけに写真撮影も禁止。
せっかく上質の展示なのに残念だ。
史料館の建物は工場に繋がっていて、そのまま工場内をガラス越しに見学する。
工場内はパイプが何本も走っていて、さぞメンテナンスが大変なことだろうと察する。
メンテナンスが不適切だと、食中毒事件を起こす羽目になる。
あの食中毒事件は、確かこの工場の脱脂粉乳を作る工程で菌が繁殖したのが原因ではなかったか。
渡されたパンフレットに書かれた社史に、その食中毒事件と食肉偽装事件をきちんと載せているのは偉い。
当たり前と言えば当たり前だが。
見学の締めくくりは、工場で作られた牛乳とアイスクリームの試食だ。
そのアイスクリームというのはここでしか食べることができないという特製品らしいのだけど、これが無茶苦茶旨い。
脂肪分が高く、生クリームかと思うほど濃厚な風味。
幼い頃、初めてレディーボーデンのアイスクリームを食べたときのような衝撃があった。
是非市販して欲しいものだ。
ちなみにこれほどではないにしても、比較的近い味のアイスクリームは札幌市の繁華街にある雪印パーラーで食することができるらしい。
質問はありませんか、とガイドが尋ねてきたので、積年の疑問をぶつけてみた。
牛乳は食中毒を防ぐため、100度を越える温度で数秒間殺菌されるのが普通だ。
しかしその熱で、タンパク質が固まったり変質したりするのではないのか。
その答えは、「瞬間的に高温に達するので、品質に変化はない」ということだった。
イメージとして納得がいかないのだが、そういうものなのか……。

お土産として牛乳パックを模した消しゴムの詰め合わせを貰い、見学ツアーは終了。
観光地としてはあまり有名ではないけど、ここはオススメできる。
しかも帰阪後しばらくして、挨拶状の葉書が届くというオマケつき。
地味に営業努力がなされているのであった。
バスに乗り、再び札幌駅前に戻る。
コインロッカーに預けていた荷物を取り出して、地下鉄南北線のさっぽろ駅から大通駅まで乗る。
大通駅から数ブロック歩き、今夜の宿に到着した。
そう、札幌の中心市街地は、近代に計画的に建設されただけあって、完全なブロックになっている。
地名は京都のように通りに固有名詞をつける方法ではなくて、県庁を起点に東西南北方向に何ブロック目であるかという方法で名づけられている。
最初は戸惑ったが、1日で慣れた。
適当に歩いていても道に迷わない。
便利だ。
宿のテレビをつけると、番組は夕方のローカルニュースの時間帯。
札幌駅前からの中継とか、ファイターズの小笠原の応援の際にファンが使っているイルカのゴム風船は100円ショップのスポット商品なので、生産終了で入手困難だとか、いかにもローカルで素晴らしい。
今回の旅行では、とにかくベタなところを訪れることをテーマにしている。
今夜の夕食はもちろん、すすきののラーメンだ。
宿から狸小路を経由してすすきのに到着。
ラーメン横丁ってどこかいな、とあやふやな記憶をもとに辺りを捜索。
場所は判ったが、どの店に入るか迷う。
迷った末、横丁の入口にある、一番最初に目に付いた店へ入る。
考えることはみんな一緒なのか、たくさんの芸能人のサイン色紙が並べ立てられた店だった。
味はまあまあ。
少なくともハズレではない。
店を出たあと、路面電車に乗るために地下鉄の駅の地下道を抜けようとしたところ、大量の人がひしめいていて面食らう。
今日は金曜日の夜。
すすきのに繰り出す人々が待ち合わせに使う地点にたまたま下りたようだ。
路面電車は環状線ではないが、市街地の南西部をぐるりと巡るような路線になっている。
碁盤目状の道路に沿ってレールが敷かれているので、カーブとなると道路の交差点で直角方向を目指すものになり、急である。
自動車教習所では習うものの、なかなか現物をお目にかかることの出来ない「路面電車だけ曲がれます」信号をカーブごとに見ることができる。
藻岩山ロープウェイに乗るため、「ロープウェイ入口」停留所で下車。
しかし「ロープウェイ前」ではなく「ロープウェイ入口」という名前なのが少々辛い。
ここから2ブロックほど歩き、さらにちょっとした坂を上らないとロープウェイの駅まで着くことはできない。
それでも市街地に隣接して突然山がありロープウェイが通っている町というのは珍しい。ロープウェイが頂上目指して登っていくと、すぐ眼前に札幌の輝く町並みが現れ、ゴンドラの乗客からは感嘆の声が上がる。
ロープウェイの山上駅は、まだ頂上ではない。
ここからロープウェイの乗客専用のマイクロバスに乗り、頂上まで連れて行かれるのだ。
料金はロープウェイの運賃に含まれている。
マイクロバスを降り、売店・飲食店が併設された展望台に登る。

素晴らしい夜景が広がる。
空が雲で覆われているので、写真に撮ると地上の光が反射して空が白く映っている。
都市からこれだけの光が空に出ているとなれば、都市の夜空が明るくて星が見づらいのも納得できる。
まあそれはそれとして、寒い!
無茶苦茶寒い!
長袖シャツに長袖のジャケットを着ているのだけど、それでも芯から冷える寒さ。
山の上だから当たり前とも言える。
マフラーを持ってくればよかった、と後悔。
周りは夜景にうっとりしたいアベックたちだらけだが、寒さに負けて早々に建物の中に戻っていく。
ざまあみろ……いやいや。
防寒をしっかりしておけば、二人身を寄せ合って夜景を眺めるのも一興だろう。
三脚にカメラを据えて夜景の写真撮影を試みていると、「写真を撮ってください」とアベックに「レンズ付きフィルム」を手渡される。
呪い……いや、祝いの心を込めてシャッターを押して差し上げた。
一層寒さが染み込んで来る。
私も暖かい建物の中に退散した。
関西から観光で来たと思われるおばちゃんのグループがいて、彼女らの話す関西弁に癒された。
宿に戻り、冷えた体を風呂で温める。
2日振りの風呂でもあるのでなおさら気持ちいい。
そして2日振りの広いベッドに抱かれて、北海道で過ごす最後の夜は更けていく。
メグミルクさんの高温殺菌の話、
低温殺菌牛乳飲む前に
納得しちゃダメだ~!
http://www.takahashi-milk.jp/
少なくとも、一般的な牛乳に比べて
美味しいです。
概して高いですが…
(びん入りの
「ホルスタイン・ノンホモジナイズド牛乳」(タカハシ乳業)で
約3倍。
タカナシ乳業の「低温殺菌牛乳」は、そこまで高くなく、
スーパーでも売ってます)
いや、低温殺菌牛乳とて、タンパク質で出来ている細菌が死ぬくらいに熱を加えているのだから何かしらタンパク質あるいはアミノ酸が変性を起こすんじゃないかという疑問があるのですね。
なんせ実際に牛乳を温めると凝固が起こるわけですから。
で、ちょいとぐぐってみました。
http://www.chemistryquestion.jp/situmon/shitumon_kurashi_kagaku32_milk_protein.html
上記サイトに記されているオーム乳業の解説によりますと、牛乳のタンパク質は熱に強いカゼインと熱に弱い乳清タンパクから成っていて、8割方がカゼインである、と。
で、やはり乳清タンパクがそれなりに凝固はするようです。
ただし考えていたようにろ過や沈殿を行っているのかというと、凝固しても微粒子なので特に処理しない、と。
細い管の中を流しているので鍋で温めたときのような固まり方はしないみたい。
殺菌温度での風味の違いはアミノ酸やそれ以外の成分への熱の影響でしょう。
日本酒も生酒と火入れしたものとでは味が変わります。
ちなみに雪印史料館の展示によると、高温殺菌の技術が導入される前は雪印牛乳も低温殺菌だったようです。
あと、高温殺菌しても風味が落ちにくいよう前処理した「牛乳が好きな人のためのメグミルク」ってのも作られてますね。
私には味の違いが判らなかったですけど。
体調やロットによって牛乳の味は変わるような気がします。
そっか、ごめんなさい。
温度が違っても
一部のたんぱく質が固まってるのは
同じなんですね。
でも減るわけではない…なるほど、
勉強になりました。
余談ですが、ホモジナイズ(均質化)という処理も
味に影響するみたいですね。
いやいや、謝る必要はございません。
ガイドの人が詳しく知らなかっただけですから。
そうそう、かつて牛乳瓶の蓋に「ホモ牛乳」とか「ノンホモ牛乳」とか書かれたのがありました。
今でもあるのかな。
「ホモ」の本来の意味を知っていても、文字を見てると座りの悪い気分になります。