地下鉄の梅田駅から梅田ガーデンシネマやシネ・リーブル梅田へ向かう場合、貨物駅のヤードの下を通る長い地下道を歩くのが普通だ。
この地下道を私は「うつむきロード」と呼んでいる。
梅田ガーデンシネマやシネ・リーブル梅田で上映される映画には切なさややるせなさを誘発する作品が多く、帰り道は自然とうつむいてしまうからだ。
そして先日観た『ブロークン・フラワーズ』。
やはり帰り道で視線が下へ降りてしまった。
主人公は若い頃に恋人を何人も作った女たらし、ドン・ジュアンならぬドン・ジョンストン。
中年になりコンピュータで一儲けした彼だったが、無気力で家庭を持とうとしない姿勢に愛想を尽かされ同棲していた女性に逃げられてしまう。
そんなドンの元に、差出人不明の手紙が届く。
その手紙は彼と別れた女性からのもので、実はドンには息子がいるのだという。
隣家に住む友人の執拗な勧めに折れ、友人の立てた旅行計画に従って、ドンは差出人を探しに昔の恋人たちを訪ねる旅に出る。
上辺では嫌々旅をしているドン。
しかし内心では寂しいし、息子に会いたい気持ちがある。
訪ねる先々で、本当の目的を隠しぎこちなく探りを入れていく。
だが、かつての恋人たちは彼女たちなりの生活を築いている。
ドンが入り込む隙はない。
ドンを演じるビル・マーレイはニコリともせず、無表情がしかめっ面。
彼から放たれるゆるさ、ダメ男感、哀愁は秀逸。
ビル・マーレイを主演に置いたところで勝ったようなものだ。
ドンの視点のショットが繰り返されたり、ドンの「取り残され感」を強調する画面構成もベタとはいえ手堅い。
同じ構図で繰り返される飛行機の離陸シーンも妙に笑えた。
旅の導入部となるミステリーが観客を引き込む道具になってはいるが、その謎解きを求めて観るとガッカリすると思う。
まったり感、モヤモヤ感、脱力感とペーソスを味わいたい人向けなロードムービーだ。

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