泣けてきた。
何だよ、この2006年よりも、1970年の人々が思い描いて作り上げた「理想の未来」の空間の方がよっぽど魅力的じゃないか。
『公式長編記録映画 日本万国博』はその名の通り、1970年に開催された日本万国博覧会の模様を記録した映画で、1971年に公開された。
1971年度日本映画興行成績第1位だそうだが、その割に映画批評の俎上に上がらず黒歴史になっている気がする。
パッケージに「このディスクには、オリジナル素材に起因するお見苦しい部分、お聞き苦しい部分がありますことを、あらかじめご了承ください」とあり、これがまずかったのだろうか。
民族衣装に身を包んだエチオピア館の職員と記念撮影を繰り返す日本人客に、女性のナレーターいわく「これでは日本人がカメラ気違いと言われても仕方ありませんね」。
つんぼ、めくら、かたわといった言葉がテレビで堂々と流れてた時代だからなあ……。
DVD としてはモノラル音声だが、画質は最高レベル。
16:9 スクイーズとレターボックスの併用によるシネマスコープサイズ収録となっていて、片面2層ディスクにより高いビットレートを維持している。
フィルムの状態もマスタリングも素晴らしいのだろう、糸くずや筋状のノイズがほとんど見当たらない。
WinDVD 7 の TrimensionDNM を使うと効果絶大で、まるで VTR 映像を見るかのように滑らかでリアルな映像を見せてくれる。
まず映画はアフリカ人による打楽器の演奏シーンから始まり、世界中の人々のスチル写真が次々と映し出されたかと思うと、万博会場の建設の模様が手短に映し出される。
千里の丘は、少しばかりの棚田以外は青々とした林である。
会場が完成しても周囲はまだ開発が進行中の田園風景。
今じゃ後ろの山までカビのように住宅に侵されて見苦しい限りだが。
そして場面は開会式へ。
昭和天皇も今上天皇も若い。
後になって登場する皇太子・秋篠宮殿下に至ってはラブリー。
現在のお姿と対比するとため息が出る。
開会式が終わると、各国のパビリオンの模様や音楽・ダンスといった民族芸能が次々と映し出していく。
173分にもわたる映画作品なので、真ん中あたりにインターミッションも入る。
後半は万博運営の裏方さんたちの模様も織り交ぜつつ、再び各国の展示やパフォーマンスが映し出される。
日本館や各協賛企業のパビリオンの模様から場面はついに閉会式へ。
結末は寂しい。
人影のない万博会場をバックに、小学生の書いた詩が朗読される。
そこに記された能天気な希望に、未来人である私は苦笑せざるを得ない。
もう祭りは二度と来ないのだ。
あなた方がいる「そこ」が最高なのだ。
夢は消え去り、不安に満ちた「今」がやってくるだけなんだぜ。
USJ よりも、行ったことはないけれどディズニーランドよりも、私は1970年のこの万博会場に行きたい。
これこそ地上に現れた最後の楽園ではないかと思う。
不満点を挙げるとすれば、日本人の格好がダサいことだ。
これだけは日本人も進歩した。

年寄りとして自慢できることのひとつに、この大阪万博を体験してゐるてふのがあるね。
ぼくは当時小学校1年生。ギリギリ、記憶してゐるのであった。
たとへば、月の石のアメリカ館、3時間待ちとか。夏休みの宿題である絵日記に描いた記憶が。
しかし、他のパピリオンについての思ひ出は、意外に少ない。住友童話館(当時、母親が、住友生命の勧誘員をしてゐた)、モルモン・パビリオン(母親の友人がモルモン教徒だった)、自動車館(飲むと速く動ける薬が発明されて……てふやうな映画を観た)、ガボン館(アメリカ館の行列途中に、暇潰しに這入った)、せんい館(あの、マルグリット人形などのコンセプト・デザインが福田繁雄と知ったのは後年のこと)くらゐ。それでも、いろいろ見た気になってゐるのは、同時代の記憶(まさに ethica)か。
羨ましい限りです。
作中、様々な少年少女、幼児が映りこんでおりますが、先生もあの中の一人だったのですね。
上がセーラー服、下がズボンなんていう昭和30年代には絶滅したと思っていた制服の少女が鮮やかなカラー映像で登場したのにはびっくりでした。
モルモン・パビリオンと自動車館は建物だけの紹介ですが、住友童話館とせんい館とガボン館は中の様子も記録されております。
せんい館って、何がせんいなのかさっぱりわかりませんでしたが、「感覚的なものですので、おわかりいただかなくても結構でございます」と案内がなされているのでまあいいか(繊維じゃなくて遷移?)。
この DVD、ごらんになるときっといろいろご記憶が蘇るんじゃないでしょうか。
ご希望とあらばゴニョゴニョ。