録画はしたけど観ないままだった TV 番組を PSP で消化しようということで、手始めに選んだのは『かみちゅ!』。
今年の7月から10月まで朝日放送で深夜に放送されていたアニメーション作品である。
絵柄が可愛らしかったので気になって一応は録画しておいたものの、「よくある学園コメディ萌えアニメかな」と思って全然期待していなかった。
しかし観てみると意外に良い出来でびっくり。
一言で評すると「スタジオジブリ製作の映画+大林宣彦の尾道三部作+萌え」という感じの作品である。
物語
舞台は瀬戸内の港町。
具体的な名前は作中で語られないが、モデルは尾道らしい。
主人公は中学生の少女、一橋ゆりえ。
内気で大人しく、舌足らずな喋り方で、中学生というより小学生に見える。
いかにもオタクな人が萌えそうな造形である。
そんな彼女はある日突然神様になってしまう。
いや気持ちは判りますが頑張って続きを読んでください。
何せ本作冒頭からして唐突だ。
中学校の昼休みに、昼食を摂っているゆりえが友人の光恵に話しかける。
「光恵ちゃん」
「んー?」
「わたし、神様になっちゃった」
「何の?」
「わかんない。昨日の夜、なったばっかだから」
どういう経緯で神様になったのか説明は一切なし。
観ている者には最後まで判らないままだ。
ここを受け入れないと話が進まないのである。
「神」様であり「中」学生、ということで「かみちゅ」。
ゆりえが神様になったことは、神社の娘である同級生の祀(まつり)の仕業で広く知られるところになるのだが、誰も疑問を抱くことなくそれを受け入れる。
マスコミがゆりえのもとを訪れることもないし、実生活上特別扱いされることもない。
ただ、神様になったことで相談事を持ち掛けられたり、神の国に入り込んだり、物の怪と会話したりする。
ゆりえはアニミズム的な世界における神なのだ。
彼女は強大な神通力を秘めているが、その力を思い通りに使うことはできない。
恋心を抱いた少年の心を操ることもできない。
しかし素直で思いやりのあるゆりえの気持ちは神通力を呼び起こし、人々に幸福をもたらすことになる。
そんな彼女の少しファンタジックな日々が一話完結形式で描かれていく。
表現
全編を通して丁寧に作られているなという印象を受ける。
特に第一話の作画には驚かされた。
スタジオジブリの映画作品かと思うくらい豊かに人物たちが動く。
さすがに第一話の質が一貫して続くわけではないが、粗製濫造な現在のアニメ業界にあって質の高さは抜きん出ている。
マニアではないから見抜けていないだけかもしれないけれど、少なくとも作画が明白に崩れている部分はなかった。
演出面では、作品を通してゆったりと優しい時間が流れているのが特徴的だ。
さらに黒電話、ダイヤルでチャンネルを選ぶ TV といった小物もあいまって、ノスタルジーを刺激する。
激しい葛藤や感情のぶつかり合いはない。
時代を切り開く新しさや批判的精神というものは全くなくて、ぬるく心地よい世界。
ノスタルジアへの逃避と批評家には批判されそうだけれど、これだけ意図的に作られていればいいんじゃないのと思う。
暴力もパンチラみたいな性表現もないから、子供にも安心して観せることができる。
少々乙女チックで初々しい恋愛描写に『耳をすませば』みたいな毛恥ずかしさを覚えるが、小学生くらいの娘さんを持つ30代のお父さんが、娘さんと一緒に観てくれたらいいなと思った。
個人的には子供たちに大人気だという『ふたりはプリキュア』よりも本作をオススメしたい。
年を取るとどうも真っ直ぐな「努力・友情・勝利」のノリや現代的なキャピキャピした女の子のノリにはついていけないのだが、世のお父さん方もそうなのでは?
日曜日の朝夕あたりの、家族で TV を観ることができる時間に放送されていなかったのが残念だ。
ついでに、オープニングとエンディングに流れる歌もなかなかいい。
両方ともアイドルソングといった感じで、前向きで明るい歌詞と曲調だが作品にマッチしている。
オープニングテーマはアコースティックサウンドに乗って、爽やかに流れながら舞い上がっていく。
エンディングテーマはゆりえ役の人が歌っており(元々ミュージシャンでデビューした人らしい)、ちょっとオールデイズ風味でノリノリだ。
DVD とか
本作は8月から全8巻の DVD が毎月1巻ずつ発売されている。
TV 放送では全12話だったが、DVD では全16話となるらしい。
かなり気に入ったし未放送のエピソードも観たいので、思い切って購入することにした。
既に発売されている4巻までと、残り3巻までの注文を完了。
ちなみにTV 放送されたエピソードは PSP 向けの動画配信サービス「 P-TV 」でも1話210円で有料配信されているので、未見のPSP ユーザーはそちらで何話かご覧になるのも一興かと。
なお12月16日、平成17年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で優秀賞を受賞したことが発表された。
これを機に、本作がもう少し広く知られればいいなと思う。
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