8 novembre 2005

『 ICO 』をプレイした

ICO PlayStation 2 the Best

『天空の城ラピュタ』といえば、何度も地上波 TV で放送されている映画だから、その筋書きを知っている人は多いと思う。
今は滅びてしまった古代文明によって建造された空に浮かぶ城、ラピュタ。
そこに行くことを夢見る少年パズーが、ラピュタ人の王家の末裔の娘、シータと偶然出会うことから始まる冒険物語である。
映画の終盤、パズーとシータはラピュタの財宝を狙う海賊の力を借りて、ラピュタに到達する。
主を失い荒廃した城を二人は探索する。
だがラピュタに残された超兵器を狙う政府の役人ムスカ――彼もまたラピュタ人の王家の末裔である――の手引きで政府軍もラピュタに到達していた。
政府軍によってシータは拘束されてしまう。
そしてムスカは政府軍を裏切り、伝承に従ってシータとともにラピュタの中枢部へ到達。
ラピュタの超兵器によってシータとともに世界の王として君臨しようとする。
一人逃れたパズーは、壁を伝ったり、蔦にぶら下がったりしながらラピュタの中枢部へ入り込み、ついにシータと再会する。
パズーとシータは滅びの呪文を唱え、ラピュタは崩壊。
ムスカの野望は潰えるのだった――。

シータとともにラピュタを歩き、シータを救うためにアクロバティックなアクションをやってのけたパズー。
『 ICO 』をプレイして抱いたのは、自らがそんなパズーになったかのような感覚だった。

『 ICO 』は2001年に発売されたプレイステーション2用のゲームソフトだ。
名作として名高く、現在では「 PlayStation 2 the Best 」に収められ1,800円という廉価で販売されている。
コンピュータ・ゲーム好きな小説家の宮部みゆきが惚れこみ、小説化したことでも有名だ。

この作品の主人公は『キン肉マン』のバッファローマンのように角の生えた少年、イコである。
舞台は中世か近世の西洋を思わせる意匠を備えた世界。
「角の生えた子供は生贄にならなければならない」という村の掟により、イコは神官に連れられて孤島に建つ古城にやってくる。
拘束されたイコは生贄としてカプセルに閉じ込められ、置き去りにされる。
だが突然起きた地震によってカプセルが落下し、イコはカプセルから放り出された。
解放されたイコは城の中で檻に閉じ込められていた謎の少女を発見する。
彼女を檻から救い出したのはよいものの、イコと少女は言葉が通じない。
しかしイコは少女に手を差し伸べる。
一緒に城を脱出しよう、と。

こうしてプレイヤーはイコを操作し、少女を連れて城からの脱出を目指すことになる。
無人の城には様々な仕掛けがなされており、ある場所では通路らしい通路がなく、二人の行く手を阻む。
身体能力に優れたイコは壁の出っ張りを足がかりに壁を伝ったりよじ登ったりすることができる。
足場のないところではパイプにぶら下がって移動したり、鎖にぶら下がって反動を用いて離れた場所へ飛び移ったりできる。
しかし少女にはそれができないので、少女でも共に進めるようなルートをパズルのようにその都度イコがお膳立てしてあげなければならない。
おまけに時折謎の影が少女を襲い、少女を影の巣へと引きずり込もうとする。
少女が完全に影の巣に飲み込まれてしまうと、そこから発生する不思議なフィールドがイコを石化させゲームオーバーとなってしまう。
謎の影を角材で撃退しつつイコは脱出ルートを探さなければならない。
足手まといでしかない少女を置きざりにしてイコだけで脱出はできないのだろうか。
行く先々に少女が近づくことで開く謎の扉があるため、それはできないのである。

少女はイコが呼んだり、手を握って引っ張ってあげたりしない限りイコについてこない。
「とっとと来いや、このクソ女!」と内心毒いたり、「オラオラ、姉ちゃん、こっちに来てワシとええことやろうや」などと阿呆な台詞を勝手にあてがったりしつつゲームを進めていく私だったが、少女のために道を作り、襲って来る敵から彼女を守ってあげているうち、少女に対して情が移ってくる。
城からの出口を確保し、「やっと城から脱出できる!」と思うも束の間、イコと少女は引き離されてしまう。
そして気づかされるのだ。
イコは少女を守っていたが、少女もまたイコを守っていたことに。
彼女を救わなければ!
気持ちが盛り上がり、コントローラを握る手には汗が滲む。
そして「城の主」との決戦に勝利するも、待ち受けているのは切ない結末。
主を失って崩れ落ちる城を目にしながら、少女と過ごした冒険の数々とその終焉に一抹の寂しさを禁じえないのだった。

プレイ中、BGM は基本的に存在せず、聴こえてくるのは二人の足音や風の音、鳥のさえずりなどの効果音だけ。
また、イコと少女が言葉を交わすことはほとんどない。
それだけに3Dで作りこまれた城の存在感が増し、ゲーム中の世界に浸ることができる。
3Dのカメラ視点もなかなかよく考えられていて、新たに進めるようになった場所に踏み入れたとき、先がどうなっているのかすぐには掴めない。
そこがどんな場所なのか、断崖絶壁なのか、降りられる場所はあるのか――周囲を見渡す緊張感を与えてくれる。
かつて通った場所を高いところから見下ろしながら落ちると即死な場所を通らなければならない場面も多々あり、高いところが好きだが同時に高所恐怖症である私にとっては、爽快感と緊張感がないまぜになって心地よかった。
海に面した断崖絶壁では「天皇陛下バンザーイ!」と叫びながら海に飛び降りて死に、玉砕気分を味わうのもまた楽しい。

なぜ角の生えた子供は生贄とならなければならないのかとか、城が何のために建築されたのかとか、「城の主」がなぜそこにいるのかといった事柄が一切説明されないままゲームは終了するが、それがまた想像の介入する余地を生み出し面白い。
まず「少年が異世界に入り込み、少女の愛情を得て脱出する」というプロセスから、少年のイニシエーションとしての物語と解することができる。
「心地よいながらも脱出しなければならない場所」として城を母胎になぞらえ、少女との邂逅を受精に、「城の主」との対決および城の崩壊を母胎との決別=出産と解釈することもできるだろう。

ともあれ、アクションとパズルというメインのゲーム要素においては、アクションゲームがあまり得意ではない私でも何とかクリアできたし、パズルも解き方の見当が付きやすく、バランスよく作られていると思う。
敵との戦闘は少し鬱陶しく思ったが、まあ許容範囲内だ。

『 ICO 』を秀作と呼ぶのにいささかの躊躇も覚えない。
それがわずか1,800円。
売り手の決断を称えたい。
そして多くの人にお勧めしたくなる作品である。

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