1998年に発売されたアダルトノベルゲーム『 ONE ~輝く季節へ~ 』は、ヒット作『 Kanon 』『 AIR 』を制作したソフトブランド Key のスタッフが中心となって制作した作品で、後のアダルトノベルゲームに強い影響を与えたことでよく知られている。
プレイヤーを泣かせにかかるノベルゲーム、通称「泣きゲー」の元祖と言われ、その物語構成が恋愛ノベルゲームの定番スタイルとなっているのだ。
面白おかしい学園生活を重ねながら、主人公が女生徒と親密になっていき、恋仲に至る。
それまでの恋愛ノベルゲームならば、それでめでたしめでたしという結末だ。
だが『 ONE 』では、そこから不可避的で絶望的な離別が主人公たちを襲うこととなる。
「これが結末なのか?」とプレイヤーが呆然としたところで、主人公たちは劇的な再会を遂げ、ハッピーエンド。
この一ひねりがプレイヤーに感動を呼ぶという仕掛けである。
『秋桜の空に』(こすもすのそらに)はその『 ONE 』の発売から3年後、2001年に制作されたアダルトノベルゲーム。
小説版が発売されたり、全7巻のドラマ CD が発売されたりと、なかなかの人気作らしい。
「ギャグが笑える」「『 ONE 』に匹敵」との高い評価を目にし、興味を持ったのでプレイしてみた。
プレイした感想。
「『 ONE 』の焼き直し」
悪く言えばエピゴーネン、良く言えば換骨奪胎。
主人公の遭遇する運命が『 ONE 』と逆、と言えば『 ONE 』をプレイしたことのある人には判るかもしれない。
『 ONE 』では主人公のことを周囲の人物が**ていくけれど、『秋桜の空に』では主人公が周囲の人物を**ていくのだ(ネタバレ防止のため伏字とさせていただきます)。
おまけに2001年の作品だったら大抵のアダルトゲームには音声がついているのが普通だと思うが、『秋桜の空に』は音声なしだし、主人公が破滅に至ったときに偽エンディングが流れるしで、どうしても『 ONE 』を思い出さざるをえない。
どのヒロインのシナリオに進んでも予定調和で、『 ONE 』を経験している私にとってはこれで感動するのは困難だった。
ギャグもつまらなくはないけど、巷のライトノベルにはもっと面白おかしいギャグを書く作家がゴロゴロいるんじゃないかと思う。
とはいえ、『 ONE 』との比較で考えると『秋桜の空に』にはなかなか捨てたものではないところもある。
『 ONE 』の主人公は奇行が多い上に、女性に対する態度はからかうことがベースになっているところが鼻につく。
何でこんな奴にヒロインは惚れるかな、と思う。
『秋桜の空に』の主人公も奇行が多くて女性に対してデリカシーのないところがあるけれど、他人への思いやりのある人物である。
物語の終盤近くで明かされる彼の過去は悲惨だ。
『 ONE 』の主人公は幼少期に*と**しているのが悲劇のきっかけだが、『秋桜の空に』の主人公は幼少期に**の**を失った上に**に*されかけている。
中学生の頃には心酔していた人物に自殺されてもいる。
そんな辛い過去を経験しているがゆえに備えたやさしさに、彼をとりまくヒロインたちが内面に抱えた傷を癒されて主人公に魅かれていくのは納得できる。
ヒロインたちのキャラクターも、口癖で特徴づけを行っているところは気になるがそこそこ印象に残る強さがある。
特にメインヒロインの涼香は主人公を弟のように異常に可愛がるお姉さんタイプで、「姉萌え」キャラクターの元祖、「姉萌え」キャラクターブームの火付け役と目されているらしい。
ヒロインの一人、若菜は「○○カナ?○○カナ?」と台詞を二度繰り返す癖があるが、これはノベルゲーム『ひぐらしのなく頃に』のヒロイン、竜宮レナの口癖の元ネタだと思われる。
そんなこんなで、『 ONE 』をプレイしたことのない人が『秋桜の空に』をプレイすると結構ハマるような気がする。
オタク向け作品のノリに馴染みのない人は、記号的にデフォルメされた登場人物に序盤でうんざりするだろうから、手を出すのはやめておいた方がよいだろう。
プレイして本作を気に入ったら、2002年に出版された小説『秋桜の空に―奈々坂の門』を読んでみるといい。
『秋桜の空に』のシナリオライター自ら執筆にあたっていて、涼香と結ばれた主人公の後日談を描いている。
ゲームの追加シナリオと言ってもよい感じだ。
「主人公と結ばれなかったヒロインは、心の傷を克服できないまま切ない人生を歩むのでは?」という疑問を晴らしてくれる、オールスター出演の気軽な読み物である。
絶版になっているので、入手困難なのが残念なところだが。
- 秋桜の空に レビュー よくある『ONE』との比較。(ネタバレ注意)

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