私のプロ野球ファン人生は阪神タイガースから始まった。
大阪に住み、一家揃ってタイガースファンで、物心ついた時期に1985年優勝時のタイガース・フィーバーを経験したのだから仕方ない。
その後タイガースが暗黒時代へと進むにつれてプロ野球熱は冷めていったが、1992年、タイガースが好調であわや優勝かというシーズンにプロ野球熱が再燃する。
額が増えた小遣いで「月刊タイガース」を購入するくらいだった。
大学に入り、アルバイトでパ・リーグ中心にゲームを観るようになってからはタイガースへの愛は薄れ、千葉ロッテマリーンズファンに鞍替えする。
そしてタイガース暗黒時代からお気に入りのプレイヤーだった和田豊が引退するに至って、タイガースからは完全に足を洗ったのだった。
とはいえ、長い間応援していたチームだ。
マリーンズが優勝したならば、日本一の覇権を争い真剣勝負をする相手はタイガースがいいな、という気持ちはあった。
だが、どちらも万年 B クラスのチーム。
そんな機会はそうそう訪れるはずはなかった。
しかし状況は一変した。
今年から始まった、セントラル・リーグとパシフィック・リーグの交流戦。
日本シリーズではないけれど、公式戦として、タイガースとマリーンズが真剣勝負を行う機会がついに訪れたのである。
そんなわけで、タイガース対マリーンズ戦である。
交流戦の、第5回戦。
舞台は学生時代のアルバイトで通いなれた甲子園球場だ。
3ヶ月前に予約して確保しておいたチケットで入場する。
京阪神のプロ野球ファンの8割はタイガースファンである。
一方、地道な営業努力で毎年ファンを増やしているとはいえ、マリーンズファンは圧倒的なマイノリティであるといっていい。
関西ではプロ野球ファンが100人居るとすれば、マリーンズファンは1人いるかいないかというところであろう。
甲子園球場の観客席は、ジャイアンツ戦以外がそうであるように、360度タイガースファンで埋まっていた。
マリーンズファンはレフト側上段の外野自由席、しかもその半分程度の部分に、追いやられるように固まっていた。
人数にして200人から300人といったところか。
サッカーの応援を取り入れた独特の外野応援は、普段パ・リーグのゲームを観に来ることなどほとんどないタイガースファンには物珍しいに違いない。
好奇に満ちた視線を浴び、携帯電話のカメラに撮られながら、私もその外野応援に加わった。
先発投手はタイガースがブラウン、マリーンズがセラフィニ。
ブラウンの投球を見るのは初めてだ。
ブラウンは制球がよくなかった。
初回、ヒットと二つのフォアボールで満塁として、サブローがセンター前ヒットを放ち2点を先取する。
何回も見たから織り込み済みだが、セラフィニも制球がよくないピッチャーである。
荒れ球で相手を翻弄することはするが、3、4点くらい取られることは覚悟しなければならない。
今日も初回、出塁させてはいけないトップバッターの赤星にいきなりフォアボールを与える。
送りバント失敗後の三振&盗塁失敗、いわゆる「三振ゲッツー」で2アウトランナーなしとするが、続く3番シーツにまたもフォアボールを与える。
4番金本はサードゴロに討ち取るが、サード今江がこれをファーストへ大暴投。
ボールが広いファウルゾーンを転々とする間に、ファーストランナーが生還し2対1。
さらに続く今岡が放った打球は完全に打ち損じのポップフライだったが、ファーストとライトの間、ファウルラインギリギリに落ちて同点とされてしまう。
両投手はなおも制球に苦しみ、2イニング目も四死球が絡んでランナーを二人背負う展開。
結局無得点に終わったが、2回裏終了時点でゲーム開始から1時間経過という重苦しいゲーム運びだ。
3回オモテにマリーンズは先頭バッターのベニーにホームランが飛び出して、3対2と勝ち越しに成功。
しかしセラフィニは味方の援護に応えることが出来ず、そのウラに先頭のシーツにあっさり2ベースヒットを打たれると、続く金本にはセンター前に抜けるヒットを打たれ3対3、またも同点に追いつかれてしまう。
4回オモテからタイガースは早々とブラウンに見切りをつけ、江草にスイッチ。
マリーンズはその変わりっぱなを攻め、先頭バッターの小坂がサード今岡のエラーで出塁するが盗塁失敗。
ゲームの展開としては明らかにマリーンズが敗退へ向かいそうな流れだ。
だが、フランコがやってくれた。
彼らしくレフト方向にスライスがかかって流れる飛球は、普通ならフェンス際のファウルゾーンに落ちるところ。
しかし甲子園球場特有のポール際の狭さのお陰で、レフトポールに付設された金網の一番下に直撃。
グラウンドレベルからは当たったのがポールの金網か外野の金網か判別しづらかったのだろう、サードの塁審は素早くジャッジできずもたついたが、判定はホームラン。
またも4対3とマリーンズが勝ち越す。
相変わらず制球が思わしくなくフォアボールを出すセラフィニだが、ボール球に手を出してしまうタイガース打線に助けられて、4回、5回は無得点に抑える。
マリーンズも5回以降は三者凡退を重ねる淡白な攻撃となった。
マリーンズはなんとか1点差を死守して逃げ切ろうと、防戦一方の投手リレーだ。
6回はセラフィニから代わった川井がタイガースを三者凡退に抑え、7回からはセットアップ・マンの薮田がマウンドに上がる。
しかし薮田は調子が今ひとつ。
ストライクとボールがはっきりしているのだろう、フォークボールを見切られてしまい、2アウトからヒットと2つのフォアボールで満塁としてしまう。
ここで迎えたスペンサーに代打檜山を出さないタイガースの作戦に助けられ、薮田は何とかこの回を乗り切る。
薮田は8回ウラも続投。
今度はタイガースを三者凡退に抑え、1点差のままクローザーの小林雅英へとマウンドを譲る。
余談だけどこの薮田の続投のお陰で、薮田が打席に立つところを見ることができた。
おそらくこれからの人生において二度と見ることはない光景だと思うから、敢えて記しておく。
小林雅英は1アウトから代打檜山にフォアボールを与えるが、奪ったアウトは全て空振り三振という力投で、見事に仕事を果たした。
マリーンズの勝利である。
炎天下、声を張り上げての応援は 500ml のペットボトルを三本飲み干してしまうほど。
正直なところ、休日だというのに疲れてしまったが、生観戦での久々の勝利。
これも心地よい疲れだ。
明日はお気に入りのピッチャー、渡辺俊介の登板が予想される。
潰れた喉が回復しているかどうか判らないが、明日も応援しに行くぞー。
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