1997年、兵庫県伊丹市にある小さなゲームソフト制作会社の発売した成人向けノベルゲームがヒットを飛ばした。
そしてオタクな面々の間では、哲学にかぶれた学生におけるサルトルやフーコーのごとく、その世界での常識として参照される作品となった。
『 To Heart 』である。
漫然と高校生活を送っていた主人公の男子高校生が、ふとしたことをきっかけとして彼の高校で女の子と知り合い、共に時を過ごすうちに恋に落ちるさまを描いた物語で、成人向けといってもコメディチックかつ爽やかな作品であった。
1999年には濡れ場を廃し音声を加えたプレイステーション版が発売され、ほぼ同時にテレビアニメーション化もなされた。
それから5年以上経った2004年末、『 To Heart 』の数年後の同じ高校を舞台とした新作『 To Heart 2 』が発売された。
こちらはプレイステーション版2のゲームとして作られていて、もともと濡れ場がないゲームである。
プレイステーション版『 To Heart 』をプレイステーション2に移植したバージョンが同梱された限定版は、中古でも新品発売当時に近い値段で売られている。
そう、中古で9,000円……。
正直言って『 2 』の方は「話のネタとして押さえておこう」くらいの気分で、『 1 』のプレイステーション2版の方がお目当てだった。
音声のついた『 1 』で若き日の過ち、もとい思い出を追憶しつつ、移植版で付け加えられたシーンというのをこの目で確かめたかったのだ。
『 1 』の方をちょこっとプレイして満足したので、『 2 』のプレイに専念し、先ほどようやく全シナリオをクリアした。
なお、プレイには Windows 上で『 2 』をプレイできるようにするソフト『委員ちょすきすきー』を利用した(快適な動作を実現してくれる有難いソフトである)。
『 To Heart2 』でも物語の基本のラインは変わらない。
『 1 』の主人公と違うのは、『 2 』の主人公は女の子が苦手であるということ。
妹のように可愛がっている1歳年下の少女と、主人公を弟のように可愛がってくれる1歳年上の少女、その2人の幼馴染が女性を意識しない例外的な存在という設定である。
当たり前のようなことだけれど、クリアして、かつて『 1 』がオタク界(?)に与えたインパクトを再び与えるのは、やはり無理なんだな、という思いを強く抱く。
『 1 』から7年、『 To Heart 』と同様のヒットを、あるいはそれ以上のヒットを目指して、沢山の学園恋愛物語がゲームとして発売されてきた。
主人公とヒロインが結ばれるハッピーエンドは巷に溢れている。
ヒット作の続編ということで丁寧に作られてはいるけれども、よくも悪くも平凡な作品だと思った。
以下、各ヒロインのシナリオについて、気に入った順に感想を記す。
小牧 愛佳
クラス委員長というと、学園物語では真面目な堅物でメガネをかけたお下げの少女、あるいはリーダーシップのある才女といったステレオタイプな描き方をされるのが一般的。
しかし彼女の場合はそうではない。
「要領が悪くてリーダーシップもなく、体よく雑用を押し付けられがちだが、不器用ながらも他人の役に立とうと一生懸命尽くす」というちょっと目新しいタイプのクラス委員長だ。
彼女の行動理由と心理が明らかになる終盤、急展開の果てのクライマックスは80年代的少女マンガのごとく、「ありえねー」と思いながらもちょっと浸っていたい気分にさせられるファンタジックなものである。
物語を通じて「はよ押し倒してしまえ!」と奥手な主人公に蹴りを入れたくなるもどかしさがアレゲだが、まあそれはそれ。
最初は鬱陶しいと感じた声優の演技も、物語が終わる頃には癖になっていた……。
姫百合 珊瑚・姫百合 瑠璃
双子。
いかにも美少女ゲーム、てな感じのキャラクターたちである。
しかし意外にも、キャラクター同士の心情の絡まりあいを最も深く描いたシナリオであった。
ただし中だるみする。
あと、大阪人の私にはインチキ関西弁が鼻につく。
ほかに声優おらんかったんか?
向坂 環
主人公が女の子を苦手とする原因となった少女、通称タマ姉。
物語は捻りの無い、陳腐で甘たるいものなのだけれど、私はお姉さんキャラにはどうも弱いようだ……。
十波 由真
プレイヤーを幻惑に陥れるちょっとした仕掛けがあるシナリオ。
でも恋愛の進展という点から言うと物語構成は王道。
草壁 優季
いかにも隠しキャラです、という短編。
そしてどこかで見たような SF 的シナリオ。
しかしそれがかえって潔さ、爽やかさを覚えた。
ルーシー・マリア・ミソラ
美少女ゲームで御馴染みのタイプ、不思議系少女。
自称宇宙人で正体不明、奇怪な行動をする。
結末まで長々と引っ張られて退屈してくるシナリオだが、結局彼女の正体は作中で明らかとされない。
物語の理解に SF 的解釈を持ち出す必要があると思われる変り種。
笹森 花梨
押しの強い元気少女。
この手のゲームをプレイするような男性には多分一番人気がないと思われるキャラクターの例。
柚原 このみ
主人公の隣家に住む、彼にとっては妹のような幼馴染。
もはやこの手のゲームでは異議の申し立てようも無い王道設定である。
お約束、といってはそれまでだけれど、設定だけでなく、物語の展開もキャラクターの次の行動を言い当てることが出来るほどベタベタすぎる。
蛇足
このゲームに時間と金を突っ込む前に『 Ever17 』をプレイしましょう。
遥かに高い満足感を得られます。
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